第798回 中古マンションの価値判断と探し方のハウツー

 

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Contents 物件案内時の注意点(買い手に好印象を与えるコツ

●不動産売買は営業マンの営業力やヤル気次第

●高く売るコツは? ●実は何より大事なのは売主の印象

●物件案内時の注意点(買い手に好印象を与えるコツ)

●本当に専任媒介がいいの?   その他

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中古マンションも結構高いように思います。なぜ古いマンションが高くなるのでしょうか?

また、良い中古と避けた方がよい中古の見分け方を教えてください。

こんな声をよく聞きます。

 

今日は、マンションの価値について掘り下げて行きます。加えて、中古マンションの探し方の実際を解説します。

 

◆中古が新築より高いという怪:その1

中古が新築より高いという印象を抱く人が最近は多いようです。どうしたわけでしょうか?

 

筆者は物件の評価を依頼されるたびに、一定地域内での物件比較作業を行うのが常です。地域内の新築と中古の比較、同年代の中古同士の比較から割高とか割安とか、いくらが適正かといった結論を導き出すためです。

 

当然、良い点も悪い点も見つけ出しますが、その評は厳しいとか辛いとか思われるようです。それは意識していることでもあるのです。 何故なら評価を依頼して来る段階は依頼者が購入に前のめりになっているわけで、それを後押しすることも大事ですが、気付いていない弱点、目に見えない欠点を気づかせてあげること、または冷徹な分析をしてあげることが筆者の役割と思っているからです。

 

最近は新築マンションの供給がひところの半分以下に減ってしまったので、希望条件に当てはまる物件がなく、あちらこちらと放浪を余儀なくされ、混乱をきたしている人もあるようです。

 

目をつけている中古が複数あって、有名で優良な物件ばかりという場合、「中古なのに高すぎる」と感じてしまう場合があるようです。

自分で調べて、新築分譲時の値段も知っていたりします。当然、値上がり幅の大きさを知ることとなります。そして、「中古は高い」という印象が刷り込まれてしまうのです。

 

高値の中古マンション、その理由と背景をかいつまんで言うと、そのエリアに新築が全くないか、仮にあってもピンポイントの比較で立地条件が良くないために安い新築となっているのです。 劣化したマンションが、同立地の新築より高いわけはないのですが、「中古は高い」という思い込みにつながって行きます。

 

ある人は言いました。「10年も経っているのに何故こんなに高いの?これなら新築の方がいい」と。 では、その中古より安くて価値ある新築マンションはどこにあるのでしょうか? ないはずです。 建物が立派でも、まるで立地条件が違います。よしんば、全くかけ離れたエリアでないとしても、実査してみると似て非なる場所であったりします。

 

同じ駅の5分圏内にあって、中古が5,000万円で新築が5,500円という場合、手数料や税金やリフォーム代などを計算したら中古は得でないと計算できたとしても、その計算には落とし穴があることに気付かない人もあります。

 

一見正しそうな計算も、立地条件と物件固有の価値を織り込んで行くと、まるで違った数字に変わりますし、また、新築を超える高値というのは、需要が分厚くありながら新築の供給が途絶えて久しく、今後も当分販売予定がないというような地域だから、中古の価格は強含みになっている地域なのです。

 

中古が新築より高いというのは、特定地域(その数は少なくない)のことで、全部に当てはめて中古は高いと考えるのは正しくないのです。

 

◆中古が新築より高いという怪:その2

しかし、何事も例外はあるものです。プロの判断を狂わせる場合があります。それは「場合」というより「時」というべきかもしれません。

 

「あの場所で坪単価@500万円で分譲するって、いくら何でもそれは高過ぎるよ」とか「中古の▲▲マンション。査定の20%増しだって。売れるわけないよ」といったプロの予想が次々に外れるとき、背景には目に見えない力が働いています。

 

目に見えない力とは、投機的な買いを意味します。投機買いが数多く入ったときです。完成まで長い新築より勝負の早い中古の買いが活発なときは、いつの間にか類似の新築よりも高くなってしまうものです。

 

類似の新築といっても実は曖昧で、勝手に自分流の物差しを持ち出して来て「安い」と信じ込み、投機にのめりこむ階層が跋扈し、中古相場を引き上げてしまう場合のことです。異常な値上がり起きているときは大抵これが原因です。

 

高い中古、それは新築より価値ある中古だということです。どちらを気に入るか、どちらが長い目で見て得か、答えは物件によって違いますし、個人差があるとも言えます。

 

新築が品薄の今、買いたくても買えないはずだから、中古は対象外だなどと決めつけ、選択肢を狭めてしまう・・・その態度は感心しません。

 

◆中古マンションを購入するときの拠り所と買い手心理

中古マンションを買った人たちは、どこに安心の拠り所を求めたのでしょうか?あるいは、どのような考え方をして決断に至ったのでしょうか?

これは個人差のあることで、また調査データのようなものも発見できず、分かりにくいテーマですが、筆者のご相談経験から列挙してみましょう。

 

①大手マンションメーカーの分譲したマンションだから大丈夫だろう

②大手ゼネコンが施工したマンションだから大丈夫だろう

③先の大地震でも特に修復が必要な箇所はなかったと説明を受けた

④内見中、室内はとても静かだった。遮音性も悪くはないのだろう

⑤清掃が行き届いており、管理状態も良さそうだ

⑥管理人さんの目が光っているし、オートロックなのでセキュリティも良さそうだ

⑦管理費等の滞納者がゼロと説明を受けた

⑧売る人が少ないというから、きっと良いマンションなのだろう

⑨建物に傾斜はないようだし、東日本大震災の揺れにも耐えた物件なのだから耐震性は大丈夫だろう

 

大体こんなふうに考えて自身を納得させたのだと思います。

ここで気付くことがあります。①売主と②施工会社が大手というくだりです。逆に言えば、大手の物件以外は不安が解消できないことになります。

 

ところが、気に入って買いたい欲望が強まると、マイナス思考よりプラス思考というか、楽観的というか、そのような心理状態になるようで、

⑩疑ったらキリがない。まあ大丈夫だろう

⑪住んでみて不具合があったら売ればいいさ

などと自分に言い聞かせて不安を打ち消すのです。

 

◆中古マンションを購入するときの検討項目を整理してみると

中古マンションを買おうかというとき、買い手には、内覧の際の観察ポイント、見えない部分の指摘事項、調査方法など、一定の予備知識が必須です。 それでも、十分に納得できる回答を得られない可能性が高いのです。

 

2000年から始まった「住宅性能表示制度(※)」によって、建物品質に関する客観的指標が新築マンションの物件ごとに提示されるようになりました。 最近は90%くらいまで普及して来たようです。 また、仲介業者が一定範囲で品質保証を行う例も出てきました。

 

しかしながら、中古マンションを購入するときは、やはり買い手自身の目利きや知識が鍵を握りそうです

中古マンションの購入に当たり、検討すべき項目を挙げておきます。

 

築年数と耐震性 (1983年以降の竣工物件かどうか=1981年以降の建築許可物件か?)

築年数と修繕履歴 (大規模修繕がいつ行われたか。その範囲は?)

分譲主・施工会社 (売主か施工会社、または両方のブランド力は高いか?)

管理会社と管理体制、管理状態 (管理会社の経験・実績は豊富か?管理人の勤務日数は?滞在時間は15時間以上か? 清掃は隅々まで行き届いているか? 放置自転車はないか?)

管理費・修繕積立金 (管理費は1㎡当たり首都圏平均の@235円より高いか安いか? 高い理由・安い理由は? 修繕積立金は築年数の割に安いことはないか?)

建物規模と共用施設 (100以上の規模か? どのような共用施設があるか? 中庭や植栽スペースはたっぷり取られているか?)

外観・玄関等のデザインとグレード感 (個性的・高級感・上質感・洗練されている・重厚感・格調高い・威風堂々・優美・壮麗などのキーワードのどれかに当てはまるか?)

間取り10年住んで行ける間取り・広さがあるか? 主寝室のプライバシーは問題ないか?家具配置はどうか?)

リフォーム費用 (どこをリフォームすべきか?設備機器は交換を要するか=使用期間は何年経過しているか?)

立地条件・交通便 (坂道はないか?歩道付きの道か?学校までの時間は?)

立地条件・環境・眺望・日当たり(嫌悪施設はないか?)

品質保証 (瑕疵担保責任はどこまでか?仲介業者による瑕疵担保保証はあるか?

 

◆内覧のときの観察ポイントは?

以上を踏まえて、内覧時の観察ポイントをいくつか紹介しましょう。売主さんが入居中のことも多いので、遠慮しがちになりますが、お願いして見せてもらいましょう。質問についても同様です。

 

   ひび割れの有無を目視で探してみる

・・・・・長く放置しておくと雨水が入り込み鉄筋が錆びて、耐震性・耐久性ともに低下してしまうからです。 外壁や廊下の天井、バルコニーの天井などに30センチ以上の長いひび割れがあったら要注意です。タイルの剥離も同様です。

 

また、仲介業者を通じて、管理組合に修繕予定はいつかと質問をしましょう。最新の「長期修繕計画書」を出してもらうことでもいいのですが、オーナー以外には見せないというマンションも少なくありません。

 

この点検項目は、管理の良し悪しを見る重要なものとなります。修繕積立金が十分でないためか、それとも管理意識が低い管理組合なのか、どちらにしても適時、適切に修繕を行ったマンションと、そうでないマンションでは、長い間に資産価値に大きく差がついてしまうからです。

 

   設備機器の耐久性をチェックする

・・・・・ガス器具、エアコン、ディスポーザー、食器洗浄乾燥機、床暖房などは、有無を確認しつつ、何年使用しているかを尋ねましょう。 入居後すぐに新品と交換しなければならないのか、まだ数年は使えそうかの判断をするためです。

 

   結露の有無を調べる

・・・・・北側に位置する個室を見るときは、明るさと通行人の足音を聞くことに加えて、窓の周囲の壁と天井に目を凝らしましょう。

黒ずんでいたり汚れがひどかったりするようであれば、冬季に結露ができやすいことを示すものであり、原因は断熱材の施工が十分でない可能性が疑われます。そして、リフォーム費用に大きく響きます。

 

  床・壁・天井の表面を全体的に点検する

・・・・・トイレや洗面所の床の表面材 (普通はクッションフロアという材料) がめくれていないかどうか、壁紙の張り合わせ部分がめくれて隙間ができていないか、変色していないか、傷や汚れがないかどうか、フローリングの表面仕上げ部分がはがれていたり、傷が目立ったりしている所がないかどうかなども。

リフォーム工事の予定に組み込むかどうかの判断に必須だからです。

 

◆必ずチェックしたい修繕履歴と修繕計画

内覧とは別のチェックポイントです。重要な点がこれです。 この確認には、管理会社からの「管理に関する重要事項報告書 (仲介業者が管理会社から取り寄せてくれます) 」をよく読むこと・・・これは必須です。「管理組合議事録」の閲覧もお願いしてみましょう。

 

<修繕履歴>

「管理に関する重要事項説明書」には、いつ大規模修繕を実施したかが書かれていますが、その内容は必ずしも明確に記載されていないので、必要に応じ、「管理組合議事録」で何をどのように行ったかをチェックしましょう。

 

竣工後12年目に最初の大規模修繕の必要時期がやってきます。次は24年目ですが、専門家に診断の結果、遅れても問題ないという場合もあります。

しかし、修繕積立金が足りないために延期したかもしれないのです。そのあたりのことは、議事録を読み込むほかありません。

 

仲介業者に依頼して報告してもらうのが手間なしでいいですが、心配な人は議事録を保管してある場所(管理人室か管理会社)に出向いて閲覧するほかありません。売主さんから管理人さんに依頼してみましょう。

 

議事録を読み込むと、管理会社からの提案がなされたが実施は見送られたとか、その理由、提案を受け入れて修繕に踏み切った場合では、工事会社はどのように決めたのか、例えば組合役員に一任したとか、決定に当たっては数社から見積もりを取って、その中から組合総会で決定したのかなどの経緯が克明に記されています。

 

また、修繕積立金の増額提案については、議論されたが反対決議であったとか、毎月はそのままで一時金徴収を決議したなどという記録もあるものです。 


<修繕計画>

国土交通省の調査によると、古いマンションでは「長期修繕計画」を立案していないものが30近くあるのだそうです。 長期計画がないということは、行き当たりばったりで修繕をして来たこと、今後もその方向にあることを示唆しています。

 

そのようなマンションは、資産価値の劣化が早く進んでしまう懸念があるのです。

長期修繕計画書がある物件なら、それを是非とも確認しましょう。 その中には必ず「収支対比表」があるはずです。年次ごとに必要となる修繕項目とその費用見込み額が「支出欄」に記載され、その支出を超える積立残高をキープするための年次・積立金合計と残高が「収入欄」に記載されています。

 

年次の積立金が変わっている(増額になっている)年があれば、その年から毎月の積立金の変更が行われる、または一時金徴収が予定されていることが判明します。

 

尚、長期修繕計画書がいつ作成されたものか、日付を確認することも大事です。長くと5年ごとに見直しが行なわれて来た計画書ではなく、分譲当初のままであれば、管理組合の管理意識が低いことを疑わなければなりません。

 

管理意識の薄さは、マンションの資産価値を下げてしまうことにつながるでしょう。その疑いがあれば、先に述べた「ひび割れの有無」や「鉄部の塗装のはがれ」、「タイルの剥離」などを再度見て回るようにしたいものです。

 

◆古くても高値の優良マンション

 VINTAGE(ヴィンテージ)の称号が付いた優良マンションの中で、最も有名なマンションは「広尾ガーデンヒルズ」ですが、築後35年を経過しても非常に高い取引額を誇っています。

 

 SUUMOで調べると、過去1年の間に、以下のような売り出し例が見られました。この売り出し価格で成約になったかは不明ですが、坪単価@500万円以上で成約になったことが推定できます。

O棟3104.95㎡ 16,500万円(@518万円/坪)

K棟9階  97.18㎡ 16,800万円(@570万円/坪)

B棟4101.58㎡ 21,500万円(@698万円/坪)

O棟6117.06㎡ 21,800万円(@614万円/坪)

L棟5118.03㎡ 24,980万円(@698万円/

 

 広尾ガーデンヒルズの所在は、東京メトロ日比谷線「広尾」駅 徒歩6分の高台にあります。起伏に富んだ約6.6haの敷地に配された、全15棟・合計1,181戸のマンションと管理センター、スーパーマーケット(ナショナル麻布)、カフェ(セガフレード・ザネッティ・エスプレッソ)、銀行(三菱東京UFJ銀行)(三井住友銀行)、医院等によって構成されています。

 

発売当初から高い人気を得て即日完売、抽選倍率平均40.8倍、最高倍率209倍だったという記録が残っています。 また、その後バブル景気が到来し、新築時に250400万円/坪であった価格は、中古市場で最高@3000万円/坪にまで跳ね上がったのです。


===現地看板による棟表示===


===ノースヒル中庭をバルコニーからのぞむ===

 

 

広尾ガーデンヒルズは何故こんなに高いのでしょうか?立地条件が格段に良いから、高台にあり緑が多いから、建物の作りがしっかりしているから、有名人が住んでいるから、維持管理が良いから、その他いくつもの答えがありますが、どれも正解と言ってよいでしょう。

 

筆者は「希少価値が極めて高い物件だから」と考えます。

 

◆価値が下がりにくいマンションの3要素

マンションの価値は、建物の劣化とともに低下して行くものですが、それを食い止める要素、すなわち劣化のスピードが遅くなるマンションの条件は3つあります。

 

   管理・メンテナンス、

   経年優化という発想、

   立地条件的に希少価値あることです。

・・・このうち、ここでは、③の「立地条件的に希少価値あること」について述べます。

 

マンションの価値は、立地+建物ですが、建物価値が経年劣化によって価値が低下しても、立地において並ぶものがないとき、その価値は何年経ても変わらないのです。

 

普通の立地のマンションが経年劣化によって、築20年くらいになれば、その価値を新築と比較すると東京23区の西部・南部では平均して70%相当に評価されますが、希少価値の高い立地にあれば80%なり90%なりの評価を受けるのです。

 

このような物件は都心の一等地にヴィンテージマンションとして多数存在しますが、そうなりえる可能性があるマンションかどうか、もしかするとそうなりつつある中古を将にあなたは選択しようとしているのかもしれません。

 

新築との比較と言いましたが、希少価値のある立地条件にあるということは「新築」にはない立地を意味するのです。新築対比80%、90%ではなく、立地で劣る新築と比べれば100%、110%ということもあり得るのです・・・・新築より高い中古、それは希少価値そのものです。

 

仮に、希少な立地のマンション、その近所、分かりやすく言えば隣地に新築が30年ぶりに供給されることがあれば、その新築は立地条件の良さから高い分譲価格となることでしょうから、その対比で見れば30年中古は60%の価格かもしれません。

 

しかし、そっくり同じような建物ができることは現実にはないので、中古が規模や高さで圧倒していれば、その差は新築に接近し、90%なり100%となって行くのです。

 

 「広尾ガーデンヒルズ」のような特別なマンションを例として取り上げた理由がお分かり頂けたことと思います。 広尾ガーデンヒルズは特別だ、例外だという反論もあるでしょうが、中古マンションを買うなら、広尾ガーデンヒルズに少しでも近い条件の物、すなわち希少価値の高い立地条件の物件を選ぶように心がけたいものだ・・・そう言いたいのです。

 

◆気を付けなければならないリノベーション物件

マンションの寿命は、長いもので100年とされます。ということは、築40年過ぎたものでも、余命は60年あるかもしれないのです。そう考えてのことかどうかは分かりませんが、中古マンションを探している人の中に、あえて築30年以上の古いマンションに限定している人があります。

 

狙いは、安いからというだけでなく、大胆なリフォームをして好みのインテリアや間取りにしたいという願望があるからです。

 

大胆なリフォームという表現は適切ではありません。リノベーションと言い換えます。

不動産業者やリフォーム業者が個人所有の中古マンションを買い取ってフルリフォームしてから売り出した「室内だけ新築並み」のマンション、すなわち「リノベーション」と表示のある中古を探している人があります。

 

ここでは、リノベーション中古を購入するときの注意点に触れます。

 

<リノベーションとは?>

初めての方のために、念のため用語解説をしておきたいと思います。

リノベーションとは、英語でrenovation と書き、本来の意味は「改革・刷新・改修」。壁紙や床を貼り替える程度の「リフォーム」と区別し、設備の刷新や間仕切り変更を伴う住宅改修のことを意味します。

 

元の中古マンションにはなかった設備を付け加えることで、新しい機能を持つマンションに生まれ変わるということになります。

例えば、食器洗浄乾燥機付きのシステムキッチンや床暖房、暖房便座・洗浄機能付き便器といった、35年以前にはなかったか極めて稀だった設備を新設し、さらに間仕切りを大きく変えるような工事をリノベーションと定義しているのです。

 

工事は、一旦スケルトン(コンクリート剥き出し)状態にしてから作りあげる大掛かりなものです。

 

<満足度が高いリノベーションだが>

洋服に例えると、マンションは言うまでもなく既製服です。個性的な間取りのマンションもありますが、どこを見ても同じような間取りが多いのが実態です。好みの間取りを見つけても場所が気に入らないとか、場所もいいが、今度は建物全体が貧相で好きになれないなど、なかなか思い通りにはならないものです。

 

そんな葛藤から辿りついた選択が「スケルトンからのリノベーション」にあるのです。

マンションですから、排水管(上下階を貫く配管)の位置によってトイレの位置も変えられないといった制約はあるものの、ある種、注文建築を実践するような楽しみを味わいながら家づくりすることができるというわけです。

 

制約が様々あってパズルを解くような計画ですが、それも楽しみと言えるようで、その結果でき上がった自宅マンションは満足度90%以上といったところでしょうか?

 

また、業者が工事を完了させた「リノベーション物件」も満足度は高いようです。筆者に届く「物件評価」のご依頼は、慎重なご性格の方なのかもしれませんが、次のような感想を付記して来られます。

 

マンション全体は古いので、それなりのレトロ感もあるのですが、管理状態は良さそうでした。室内は、すごくお洒落で、色使いも自分の趣味にぴったり。設備も最新のものがついていて、とても気に入りました」と。

 

しかし、どこかに落とし穴はないかと疑ったのでしょう。「この物件は買っても大丈夫でしょうか?価格は高くありませんか?」などと相談メールを寄せて来ます。

 

<満足度100%の住まいも資産価値の視点では疑問の場合も>

こうして手に入れた満足度100%のマンションには、それなりの費用がかかっています。スケルトンからのリノベーションとなると、最低でも500万円は必要で、2000万円を超える例も少なくないと聞きます。

 

何年かして売却するとなったとき、見学者に対し、「〇〇〇万円かけたのです」などと力説する所有者があります。「だから、本当はもっと高く売りたいのだ」という主張、いや恨み節なのです。

 

なぜなら、所有者のこだわりは、他人にとって意味のない場合があり、中古市場では所有者(売り手)のこだわり部分を評価されないからです。人間には個人的な好みというものがあります。好き嫌いと言ってもいいでしょうか?

 

所有者のこだわりは、それゆえに、あまり個性的な間取りにしたり、奇抜なカラーやインテリアで飾ったりした住まいも、別の人からは嫌われてしまうことがあるのです。

たまたま同じ趣味の人が見学に来てくれたら幸運ですが、そうでないことの方が確率的には多いものです。従って、こだわりもほどほどにしておかないと、仇となりかねません

 

筆者は、「マンションは永住と決めない限り、購入するときから売却を念頭に置いて選択することが大事」と主張してきました。

 

費用の掛け過ぎは、他人の知ったことではありません。マンションの価値は、間取りや設備も大事ですが、もっと大事なことは立地条件ですし、マンション全体の価値、例えば規模(スケール感)や共用空間なども含めて総合的に判断されるものです。 室内にかけた費用がそのまま価値(売り値)の増額とは行かないのです。

 

<リノベーション済み中古は高すぎる?>

リノベーション中古を購入した人も、次に売却するときに、同様の落胆を味わうことになるでしょう。理由は、そもそも購入額が高過ぎるからです。

自分でリフォーム会社を探し、何度も打ち合わせを重ねて発注するリノベーションより、業者が行ったリノベーション中古の価格には、売主業者の利益が多額に乗っているからです。

 

中古マンションは、築40近いものになると、レトロな印象の中に味のある建物もないことはないですが、多くは見映えが悪く見学しても購買意欲が湧かないものです。無論、一番の理由は建物の耐久性や耐震性に不安があるからです。

 

そこで、販売促進のために専有部分だけでも新品同様にしようという策が自然に登場して来ます。つまり「リフォーム」です。

 

所有者が居住したままでリフォームするのは難しいですが、移転してからなら思い切った工事が可能になります。思い切った工事、すなわち設備機器の交換をはじめ、間仕切りも換える「リノベーション」です。

 

リノベーションは、玄関ドアや窓のサッシなどを除けば、新築マンションのモデルルームにも劣らない、むしろ斬新な印象を放つマンションを誕生させることも可能です。

その綺麗でお洒落で、賃貸マンションでは見られない先進の設備を備えたリノベーションマンションは、見学者の購買意欲を高めるのに力を発揮します。「新築みたい!」と舞い上がって契約してしまう人があるのは想像に難くないのです。

 

しかし、築40年になろうかという古いマンションには重大な欠陥が隠れている場合があるので、見せかけに騙されてはいけません。

 

筆者の「マンションの評価サービス」には、ときどきリノベーション物件の依頼があります。評価レポートには、当然ながら価格が適正かどうかという項目を設けていますが、リノベーション物件はほぼ例外なく割高と出ます。

 

表面は華やかでも、中身(耐震性と耐久性、その他)は大いに疑問の老朽化マンションと言うべきリノベーション物件は、価格と価値が一致しないのです。

 

誤解のないようにお断りしておかなければなりませんが、マンショ1棟をリノベーションしたものは別です。 ここで注意を喚起したいのは、あくまで1戸単位で販売されるリノベーション物件のことです。1リノベーションは、共用部のリフォーム・大規模改修も行い、必要に応じて耐震補強工事も実施していることが多いからです。

 

話を元に戻します。

リノベーション物件は、例外なく売主が個人ではなく業者です。中には大手業者も含まれますが、大半は無名の不動産業者です。

40年を超えるような物件は中々買い手が付かないので、個人の売主は業者に買い取ってもらう道を選択する場合があります。 買い取り業者は安く仕入れ、リノベーションを施して販売するわけですが、そのとき信じられないような利潤を加えたと見られる例にたびたび遭遇します。

 

売主直販なので当然なのですが、仲介手数料が無料であることを強調し、いかにもお得感がありそうに見せる説明で販売に当たっているものも見かけます。

 

マンションの仲介をしても、手数料は最大で6しか受け取ることができません。実際3になることが多いのです。これに対し、リノベーション物件を自社物として販売する場合は、仲介でなく売主としての売り上げ100%と利益20%以上を取ることも可能です。

 

仕入れ価格3200万円+リフォーム工事代800万円、販売価格5000万円、利益1,000円といった価格構成になっています。

 

新築マンションと同等、もしくはそれ以上にお洒落で快適そうなリノベーション物件を見てしまうと、中古相場がよく分からない初めての人は、高いと思わずに買ってしまいがちです。その点に十分な注意を払うべきなのです。

 

<高くても値打ちあるリノベーション物件>

耐震補強工事が完了しているマンションにお目にかかることが11件くらいあります。

補強工事済みのマンションで、リノベーションまで完了していたら、買い手は安心も得られ、かつ新築マンションと見まがう室内に大きく購買意欲を高めることでしょう。

 

そのようなマンションなら、たとえ高くても買い手にとってメリットがあるかもしれません。なぜなら、リフォーム工事の手間が要らないからです。

 

リフォームプランを立案し、工事業者を選択し、打ち合わせ、見積り検討、プラン見直し、工事契約といった一連の作業は相当のエネルギーを要します。それが無用というのは、随分楽なものです。価格が高いとしても、「世話無しで良い・すぐ入居可能」は、価値があるのかもしれません。

 

<見落してはならない耐震性>

19816月から施行の「現行・耐震基準」によって建てられたマンションは基本的に安全とされます。それ以前のマンションは「旧・耐震基準」のマンションなので安全性に不安が残ります。

 

旧・耐震基準のマンションでも専門機関に診断してもらうと、安全性に問題ないと回答のあるものも存在しますから、旧・耐震基準のマンションは全部が危険というわけではないのですが、「耐震診断」をしてみなければ安心は得られません。

 

マンションの耐震診断は管理組合(居住者全体)から発注されるもので、個人ではできないため、耐震診断を実施したかどうかと、結果はどうだったかを調べることが必要です。現実は、耐震診断を行っていない旧耐震のマンションは70%もあると言われています(国土交通省調べ)。

 

つまり、1981年以前の古いマンションでは耐震性に疑問を残したまま売り出しているものが多いのです。仲介業者、もしくはリノベーション業者に「耐震診断はどうなっていますか?」と尋ねることが必須です。

 

ところで、1982年竣工と記載ある中古物件は、「新耐震マンション」と思いますか? 答えは??です

 

マンションの工事期間は概ね「階数3か月」が目安とされていますから、仮に9階建てマンションなら竣工の1年前に着工していたはずです。1982年の7月竣工のマンションなら1年前の19816月か7月に着工したと推測できます。しかし、14階建てだったら19812月か3月の着工だったはずです。

 

建築確認が下りる(許可と同義)と同時に着工するわけではないのですが、筆者の情報の中に、旧耐震基準の建築確認通知書を19811月に受け取ったが、近隣住民から同意を得るのに時間がかかり、着工を同年5月中にできないと建築確認が無効になることから、大金を建設反対住民にばらまいて着工を急いだケースがあります。

 

そのマンションは「旧耐震基準」で建てられたのです。そのマンションは今も大阪市に現存しています。1995年の阪神淡路大地震で大破しなかったことだけは確かですが、被害は小さくなかったのです。

 

1982年竣工のマンションは「旧耐震」基準の可能性が高いと思った方がいいのです。少し前に、営業マンから「1982年は、基準の変わった1981の翌年なので大丈夫」と説明を受けたというメールが購入検討者から筆者に届きました。

 

建築確認通知の日付を見るのが確かな方法ですが、通知書そのものが残っていないことも多いので、筆者は上記の逆算方式で推定し、「旧耐震マンションではないかと思います」と回答しました。

 

リノベーションマンションで気を付けるべきは価格が適正か(高過ぎないか)と、旧耐震か新耐震か、旧耐震の場合は「耐震診断」を受けているかと、受けていれば「耐震補強の要否」を確認することです。

 

◆マンションの建て替えは不可能と思った方がいい

 古いマンションを検討している人に尋ねられます。何年か先に建て替えの話が出たら、どうなりますか?資金拠出はどうなるのかという質問です。

 

中には、これを買えば、建て替えの恩恵に預かれるのではないかと皮算用する人もあります。 筆者は、どちらにも「建て替えは百%不可能と思った方がいい」と答えています。

 

日本で集合住宅というと江戸時代からあった「長屋」のことですが、鉄筋コンクリ―ト造となると歴史は浅く、日本国内で最も古く、現存するものは、長崎県にある通称・軍艦島の住宅のうち7階建の30号棟と言われます。1916年(大正5)の建設で、日本初の鉄筋コンクリート造の高層アパートとされています。

 

世界文化遺産に登録されたことでご存知の読者も多いと思いますが、軍艦島は明治時代から昭和にかけて海底炭鉱によって栄え、最盛期の1960年(昭和35年)には5,267が居住、人口密度は東京特別区の9倍以上、83,600/km²世界一に達したと言われます。

 

炭鉱施設・住宅のほか、小中学校・店舗・病院・寺院・映画館・理髪店・美容院・パチンコ屋・雀荘・社交場(スナック)などがあり、島内においてほぼ完結する都市機能を有していたそうです。

 

関東大震災の復興住宅とし1924年(大正13年)から1933年(昭和8年)の間に、東京を中心に16か所のアパートが建設されましたが、その名を「同潤会アパート」と言いました。2015年を最後にすべて建て替えられましたが、最も有名な建て替え例は青山アパートメントで、後に「表参道ヒルズ」となっています。

 

同潤会アパートは、すべて賃貸住宅でしたが、分譲マンションとしては、1955年に第一生命住宅(現、相互住宅)が「武蔵小杉アパートメンツ」を販売しています。

(後に建て替えられて「武蔵小杉タワープレイス)等」に生まれ変わった)

 

翌年には、日本信販(現UFJニコス)の不動産部門である日本開発(株)が「四谷コーポラス」を分譲しました。28戸の小型マンションです。今となっては安アパート風ですが2017まで現存していました。

これが最古の民間による分譲マンションとして、61年を数えました。その四谷コーポラスも建て替えられています。

 

マンションの建て替えは合意形成が難しく、事実上不可能な場合が多いのですが、ある要素が加わることで可能になるものです。

 

報道によれば、「四谷コーポラス」では28世帯が日ごろのコミュニケーションがよかったために合意形成がスムーズだったとあります(デベロッパーの旭化成不動産レジデンス談)。

筆者は、それだけではないと思うのです。何がポイントかというと、建て替え資金の捻出が比較的容易だったからです。

 

具体的な資金計画書を見たわけではないのですが5階建て28戸が地下1階・地上6階の51戸に化けたようですから、もともと容積率に余裕があったか、容積率が割り増しになったかして建物のボリュームが増えたのです。増えた分を販売することで資金の大部分が賄えたのです。

 

建て替わる新築マンションのうち、28が所有者に渡されるか、金銭を受け取って他に移り住むかの選択になるわけですが、今回のケースは27が分譲対象とあるので、24が地権者に渡ることになったようです。

 

<マンションの寿命は百年?>

先に述べた長崎の軍艦島は居住者のいない住宅なので、荒れ放題、「朽ち果てる寸前」という印象ですが、四谷コーポラスはコンクリートの躯体はしっかりとしていましたし、築60年を超えても居住者がありました。同潤会アパートも、築80年過ぎて居住者があったのです。

 

つまり、マンションの寿命は、80年は優にある、石炭産業が今も健在だったら軍艦島の集合住宅には今も人が住んでいたとするなら、100の耐久性があるとも考えられるのです。

では、なぜ「四谷コーポラス」は61年で寿命を終えることになったのでしょうか?

 

コンクリートの躯体は、筆者が現地を見に行ったときの感想を述べると、外からの目視では、まだ当分住めるような感じがしました。 

しかし、もしかすると雨漏りが頻繁に起きていたのかもしれません。エレベーターのない5階建てなので、不便をかこっていたのかもしれません。

 

オートロックも何もないマンションなので、外部から管理人室の前をすり抜けて各住戸の玄関前まで侵入できてしまう不用心さから、セキュリティの高い住まいが望まれていたのかもしれません。

居住者の不満や願望を知ることはできませんが、住み心地が悪かったことは間違いないはずです。

 

マンションは耐用年数の観点では、「鉄筋コンクリートの躯体」と「エレベーターや水道・ガス・電機などの設備」とに大別されます。寿命は、それぞれに異なります。

躯体は百年であっても、設備は30年程度と言われます。エレベーターは長くても40年で交換しなければ危険と言われます。

 

いずれにせよ、何もしないで永久に存続するわけではなく、人間と同じように、年齢を重ねれば、どこかに故障が起きますし、筋肉が減ったり、骨が弱くなったりもするのです。また、百歳まで生きる人がある一方、60くらいで死んでしまう人がいるように、マンションの寿命もばらつきがあります。

 

 マンションが短命で終わるもの、長持ちするものと差が出てくるのは、次にあげる要素が大きく関係しています。

①劣化のしにくさ

②設備配管類の維持管理のしやすさ

③入居後の適切なメンテナンス

④地震などの外的要因

 

耐久性を知るには、「住宅性能表示制度」(2000年制定)を利用する方法があります。

同制度を利用したマンションでは、そのマンションがどれだけ長持ち仕様で造られているかを、一般の人にもわかりやすく表示しています。それが「劣化対策等級」というものですが、 等級ごとに、以下の耐用年数が期待できるマンションであることを示しています。

■等級3……おおむね3世代(75年~90年)

■等級2……おおむね2世代(5060年)

■等級1……建築基準法に定められた対策がなされている(最低基準)

 

新築マンションを調べていると、最近は半分以上が「等級3」の性能を有しているようです。

ということは、多くのマンションが75年以上90年の寿命があることになります。しかし、等級2以下でも、メンテナンスを適切にして行けば同じくらいは持つはずです。

 

逆に、等級3のマンションでも設備を含めてメンテナンスと交換をきちんと実施しなければ寿命は50年くらいで尽きるかもしれません。

 

寿命の長さは「メンテナンス」の仕方がカギを握るということになりそうです。最近のマンションは分譲時から「長期修繕計画」を立案し、少なくとも30年間は計画的に大規模な修繕をして行きましょうと売主デベロッパーは提案してくれています。

 

購入後は売主との関係は薄れますが、居住者(オーナー)は管理会社の助言に従い、定期的(35年ごと)に計画を見直し、30年後も、その後の10年なり20年なりの新計画書を策定してメンテナンスを適宜行うことが必須になります。

 

<中古マンション購入時の不安は余命か?>

新築の方が中古より何となく安心と考える人が多いようです。購入予定者(ご相談者)に、筆者が具体的にヒヤリングした結果から受ける印象です。

 

「新築の方が、気持ちが良いから」と「中古は長く住めない気がするから」というのが最も多い理由です。

前者は理解できますが、後者の理由で中古マンションの検討を最初から諦めてしまうのは勿体ないと思うのです。なぜなら、中古の方が新築より良い物件も少なくないからです。

 

良い立地にある、良い間取りが多い、オープンスペースの樹木が育って無機質なマンションに彩を添え、マンション全体の印象が良い、管理状態も分かる(居住者のマナーの良し悪しが分かる・管理意識の高さが窺える)といった長所が中古マンションにはあるのです。もちろん例外もあるのですが、新築に劣ると決まったものではありません。

 

「長く住めない気がする」というのも正しい認識ではありません。築75年がマンションの寿命だとすれば、築20年マンションの余命は55年です。新築は余命75年です。この差を何と見るか、筆者が35歳のご相談者に聞くと、55年住めれば何も問題ないと答えが返ってきます。55年も住み続けるとは考えにくいとも語ります。

 

50歳の方は永住したいと言います。そして、「余命が55年あるなら、百歳まで住み続けられるよね」と即座に答えが返ってきます。

 

◆中古マンション探しのコツと手順

中古マンション探しは、WEBサイトを検索する方法が中心ですが、サイトを覗くと物件数だけは多数ありそうに見えます。予算に合う物件は何百件と出て来る、条件を絞っても50もある。間取りも良いし、大手分譲なので品質も期待できる、場所も大体だが悪くない感じがする。このような物件が二つ、三つと見つかります。

 

早速、連絡先にメールを送り「内見希望」を伝え、次週の日曜に見学に行くこととなりました。見学の結果「管理状態も良いし、悪くはない物件だけど、古いなあ」と感じてがっかりし、営業マンから「こんな物件は滅多に出ませんよ」と勧められますが、もうひとつ気が乗らないので断ってしまいます。

 

次の物件は大規模で存在感があり、エントランスホールなどの共用部も豪華で一目惚れしました。対象住戸も眺望、間取り、設備とも悪くない。少しリフォームが必要になりそうに思ったが、担当者の説明では100万円もかからないというので、予算的にも大丈夫と思いました。

 

ところが、オフィスに連れて行かれ、住宅ローンの計算や登記料その他の諸経費を出してもらったところで、「問題なければ申し込みしてくれ」と言われて困惑します。

急には結論が出せないと断ると、「中古マンションは先着順なので、早めに結論を下さい」の声だけが無慈悲に響きます。

結局、他の客に取られたという連絡が来て話は流れてしまいました。

 

中古マンション探しは難しいなと感じている人は少なくないようです。新築マンションなら、担当営業マンが「1週間お待ちします。来週もう一度お越しいただいて課題を解決しましょう」などと言ってくれます1週間の中で、購入を決断するための問題点を買い手なりに整理して次回の商談(訪問)に臨むことができます。 

 

それに対し、中古マンションは複数の仲介業者が競って販売するので、「売れ違い御免」になるのです。売主が買い手を選ぶということもあるらしく、下手に指値を入れる(価格交渉をする)と売ってくれないとも聞きます。

 

新築マンションのモデルルームは常設の展示場のようなもので、何度も訪問できますが、中古は現品販売であり、売主が居住中ということも多く、長い時間の見学は遠慮しがちになります。何度も訪問することも難しい。これも壁になっている気がします。

 

 このような経過で、意中のマンションに辿り着かないまま半年以上の時間が経過します。中には2も経って見つからない、疲れたので休止中などという人も珍しくありません。

 

新築マンションにせよ、中古にせよ、探し方が課題になっている人は少なくないのです。新築は比較的簡単かもしれませんが、中古は結構厄介です。

 

繰り返しになりますが、新築のように資料が揃っていないこと、知識不足の営業マンが多いこと、その割にはスピーデイな結論を求められること、先着順なので「売れ違い御免」になりやすいことなどが理由です。

 

<中古マンション探しは自助努力で>

筆者が先ず言いたいのは、業者を頼りにしてはダメということです。仲介業者に条件を伝えておけば、あてはまりそうな物件が出たら自動配信してくれるとでも思っているのかもしれませんが、期待するほどの成果は得られません。

 

AI(人工知能)流行りのせいか、さも「あなたにピタリの物件情報を常時10万件の登録物件の中からAIが選び速やかにお届けします」などといった広告も目にします。

 

しかし、見事に媒介(媒酌)が成功したという話は聞きません。数だけは期待した通りに送って来るということは言えそうですが、内覧に行ってみると問題がいくつもあって決めきれないのです。

 

業者に言わせると、メールで情報提供するだけで案内(見学予約)が取れれば楽なものらしく、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる式に送るのでしょう。HPにずらりと物件を掲載し、反応を待つのも同じ手法です。

 

特定物件の「出たら教えて」の登録も同じです。要は、貴方だけに情報を送って来るわけではないので、常に競争にさらされています。「一斉に情報を公開し、早い者勝ちですよ」というだけのことです。

 

待っていたら条件に合う物件が飛び込んで来るのでしょうか? 広告という形の情報は、どれもよそゆきの顔をしているものです。欠点・弱点は許される範囲で隠しているので、深く知るには、現地へ行って素のままを見る必要があります。

 

結局、条件にピタリの物件を見つけるには、自分で動いて探すしかありません。

 

<たくさんの業者に声をかけておくという戦略は正しいか>

いろいろな業者に登録しておくと、多数の情報がひっきりなしに届くことになるのでしょうか。

また、意中の物件がある人は「出たら教えて」の登録をしておけば、自動的に情報が届くのでしょうか。

 

いずれも、中々出て来ないのが現実です。人気がある物件は売り惜しみする人が多いからです。事情があって売ることになる例もありますが、3年ぶりの売り出しなどというケースも少なくないのです。

 

大型マンションの場合は、結構な数の売り物が出て来ますが、条件の合わない住戸ばかりで、特定の間取りに限ると1年に1回あるかなしかといった確率です。

 

意中のマンションが2つなり3つある人はどうでしょうか?確率は高くなるものの、期待は裏切られることが多いようです。

 

結局は嫁探しと同じで、他人頼みでは生涯の伴侶は見つかりません。方法はただひとつ、自分からポータルサイトを頻繁に覗いてチェックするしかないのです。

 

夫婦の縁と同じで、中古マンション探しは誇張して言えば、星の数ほどある異性の中からたった一人の相手を探し出すのは、偶然のたまものです。毎日サイトをチェックしていても見つからない、ようやく一目惚れした物件を見つけてもタッチの差で他の買い手にさらわれることも少なくありません。

 

もう一度言いましょう。こういう物件が欲しいと表面的な希望条件を伝えても、ストライクボールを投げ返してくれる業者は存在しないのです。何より、業者は複数です。貴方の知らないところで同時に検討している買い手が常にいるのであり、あなただけの特別扱いはしてくれないと思った方が正解です。

 

<中古マンションの見方を勉強するために:その1>

中古マンションは、素早く決断することが要求されます。そのためには、予備知識が必要です。まずは何処か見学に行きましょう。勉強のためと割り切って2つか3つ内覧してみましょう。

 

仕事の合間を縫って物件探しをするのは、簡単のようで存外時間がかかるものです。内覧に行くにも、その後の検討についても迅速な行動が求められますが、よく勉強している人でも、うっかり見落としてしまったリ、隠れた問題点に気付かなかったりすることがあるものです。まして、中古マンションの見学経験が浅い人は、全く気付かないこともあるのです。

 

何が問題かも分からないので漠然とした不安が湧き、スムーズな結論が導けないものです。そこで、事前に見学の際のチェックポイントなどを把握してから内覧します。

 

座学の後にトレーニングをするというイメージで何件か見学をすることが必須です。言い換えると、ぼんやり何となく見学に行くのではなく、課題を持って行く、学習のポイントを抑えてから行くことが大事です。

 

<中古マンションの見方を勉強するために:その2>

筆者が提供する「物件の評価サービス」を利用するのもお勧めです。

 

抽象論を語った書籍や筆者が提供する資料、あるいはインターネットの情報などは無数にありますが、具体の物件に落とし込んだ情報ご依頼物件に沿った解説・評価レポートは、他にないサービスです。

 

レポートを取得してから見学に行くのがお勧めです。見学前に対象物件が売れてしまう可能性があるので、遅くとも3以内にレポートをお届けしています。きっとお役に立つことでしょう。

 

素早く結論を出すための予備知識、例えばチェックすべき事項は何か、調べてもらうべき事項、見学の際のチェック項目などを常に携えておくことが必須です。そのための学習を効率よく進めて初等学級を卒業しましょう。

 

課題を持たずに見学しても意味がないと思いましょう。一生に2度あるかないかの大きな買い物を短時間で決断しなければならないのが現実なのですから。

 

<選択の優先条件や重要な条件が見えてきます>

座学と実学は違います。理論と実践も違います。理屈では分かっているつもりでも、「つい」というのが人間の性(さが)です。理性では分かっているのに、己の感情によって意図しない方向へ誘導されてしまうこともあります。

 

何度も失敗を重ねて痛い目に遭っていればブレーキも掛けやすいものですが、マンション購入で何度も失敗するというわけにもいかないので、事前の学習を通じて自分の慧眼を育てるほかありません。

 

見て勉強して、また勉強し、次にスポーツの世界と同じように、実戦形式の練習をし、さらに練習試合を重ねて、勝つコツを身に着けて行くのです

 

<知識・経験を積むとWebサイトの見方もプロ級に?>

多忙な人ほど、効率よくゴールに達するようにしなければなりません。たくさんの物件情報の中から不要な物件を排除し、条件の範囲で気に入りそうな物件を見つけても現地に行って落胆することが多いのが現実です。

 

その落胆確率を減らして購入まで最短距離で到達するためには、欠点・弱点をインターネット情報の段階で見抜くスキルが必須です。

慣れれば、裏に隠れた情報の探し方も分かるようになるでしょう。

 

その手前の段階にある人、若しくは多忙ゆえに情報分析をやっていられない人は、積極的に筆者の提供するサービスを一度ご利用になるのが早いかもしれません。

 

 <勉強のし過ぎで決断ができない懸念も>

探し方のコツがつかめて次々と候補物件を見つけ、かといって見学件数は絞りこめるようになった人であっても、100%の満足を得られる物件はないので、最後のところで悩むことでしょう。

 

「あちら立てれば、こちらが立たぬ・帯に短しタスキに長し」と感じたり、長所・短所やメリット・デメリット、または気に入った点・心配な点といったふうに整理をしてみたりするものの、結論が導き切れない人も多数あります。

 

インターネット情報を探しますが、的確な答えは見つかりません。こういう声も聞くし、こんな書き込みもある。結局、どれが正しいのか分からない。自分なりの解釈を一度はしてみたが、続けて情報を集めると、どうも違うらしい。

 

勉強のし過ぎと書きましたが、正しくは中途半端な勉強はかえって混乱を招くものだということです。

 

<百点満点のマンションはない。短所を補ってお釣りが来ればいい> 

人間は欲深にできていますから、「より良いものを、より安く」と望みます。しかし、それがエスカレートすると「青い鳥症候群」に陥る危険があります。

 

そこで、どこかで割り切る必要があります。「百点をつけられるような理想的なマンションはそもそも存在しない、必ず気に入らない点や懸念点が一つ二つはある」このように思いましょう。

 

「あちらが立てばこちらが立たず」となることを承知の上で検討にかかるのが賢明な態度というものです。問題は優先順位です。後順位のものは捨てましょう。短所・デメリットは、長所・メリットが補ってお釣りが出るかどうかで判断しましょう。お釣りが出るほど長所・メリットのインパクトがあればヨシ、そうでもないなら見送るといった考え方をお勧めします。

 

<最後に。住宅ローンの仮審査は予め通しておきたい>

中古マンションの場合、先着順なので決断したら素早く購入申し込みをすることが大事です。しかし、資金の裏付けがないと受け付けてくれない場合があります。

 

資金の裏付けとは、何銀行でもいいので「仮審査の合格通知(住宅ローン事前審査通知書)」を取得しておくことです。物件を適当に選び、審査をお願いすれば1週間以内で答えは返ってきます。これがあるとないでは、スピードにおいて段違いの差ができてしまいます。

どこかのタイミングで、審査を申し込むことをお勧めします。

 

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらからhttp://www.syuppanservice.com

 

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・・・継続中・・・ご利用をお勧めします。

 

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https://www.sumu-log.com/archives/author/mituikenta/(スムログ)

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