第800回 「続・地震に強いマンションの話」

Contents 物件案内時の注意点(買い手に好印象を与えるコツ

●不動産売買は営業マンの営業力やヤル気次第

●高く売るコツは? ●実は何より大事なのは売主の印象

●物件案内時の注意点(買い手に好印象を与えるコツ)

●本当に専任媒介がいいの?   その他

  お申し込みはこちらへ mitui@syuppanservice.com

 

※ご自宅マンション売却のご相談もどうぞ

こちらから→三井健太のマンション相談室【物件評価申し込み】 (mitsuikenta.com)

今日は、前回に続いて、マンションの構造、そのうち「耐震性」についてお送りしようと思います。

 

4.地震対策マンション

地震が発生したときに起こる数々の障害を予想し、その対策を予め施したマンションが増えているようです。その細部について見て行くことにします。

 

●地震発生時のエレベーター

ご承知のように、地震が来ると作動中のエレベーターは止まってしまいます。 ただし、大抵のマンションは、停電になっても予備電源によって最寄りの階に着床するので、閉じ込められることはまずないのです。

 

ただし、エレベーターが復旧するまでの時間が長いと面倒です。

エレベーターが止まったとき、問題は高層階の居住者です。エレベーターが動かないと階段を伝って、歩いて移動しなければならないからです。

地震が収まり、停電がほどなく解消していればよいのですが、長い時間停電が続くと不便極まりないということになります。

 

この問題を解決するのは非常用電源(自家発電機)しかないのです。東日本大震災以降、この装備を謳ったマンションが増えています。 しかも、3日間連続使用も可能という能力の高い発電設備を装備する物件も出始めたのは歓迎すべき傾向です。

 

●地震でゆがんでも開く玄関ドア

地震の直後は、慌てずに室内に居た方が安全と言われるマンションですが(但し、家具等の転倒防止を施しているものとして)、いつまでも室内に閉じこもっているわけにはいきません。しかし、玄関ドアが歪んでしまい、押しても開かないという事態が考えられるます

 

そのようなことがないよう、最近のマンションは「耐震ドア」または「耐震枠付き玄関」と言って、はじめから玄関の枠よりも小さな(つまり、すき間がある)ドアで、かつ変形するように作られています。 このため、多少の歪みなら、ちょっと力を入れて押せば開くようになっているのです。(下図 参照)



 

●食器が飛び出さない扉

キッチンの吊り戸棚が地震で開いたら、中身が飛び出して危険です。最近の新築マンションは、ほとんど「耐震ラッチ」という飛び出さない仕掛けが付いているようです。

 

●施工チェックの義務付け

設計上どんなに立派なマンションでも、施工に手抜きがあっては危険です。そのためには、第三者のチェックが重要になって来ます。

 

そこで、法律は予め指定したチェック機関に定期的な検査をさせるように義務づけています。

チェック機関は、「指定確認検査機関」と呼ぶのですが、2005年に発覚した「耐震偽装事件(姉歯事件)」以来、検査機関の資格審査自体が厳しくなったほか、建築確認申請時点でのチェックに関しても厳しくなったと聞きます。

 

現在では、いわゆる手抜き検査や業者との癒着なども起こりにくい状態が作られたと信じてよいのでしょう。

 

ただ、検査は現場に付きっきりで行なうわけではないし、訪問頻度もさほど多くはないので、悪意があれば手抜きはいくらでも可能です。

 

この事件以前からの第三者検査としては、設計事務所による「工事監理」でした。監理は監督と管理の意味で、施主(マンション事業主)側から、工事会社に対して”もの言う”立場にあるのです。

工事の進行過程で何度も現地に足を運び、細部の打合せをしつつ、監理をします。

 

但し、設計監理を施工会社(ゼネコン)が兼ねている場合もあるので、この場合は、第三者の目が届かないことになります。

 

●任意の施工チェック「建設住宅性能評価」

義務付けられた施工チェック以外には、住宅性能表示制度の一環で、設計内容の評価(住宅性能評価)と、建設中の建物を検査する「建設住宅性能評価」が行なわれています。

 

評価するのは、やはり国土交通省の審査をパスした「住宅性能評価機関」です。評価を受けた、または受ける予定の住宅は下のロゴマークを広告・パンフレットに貼りつけてあるので、ご存知の方も多いことと思います。

  

 

性能評価は、あくまで義務でなく任意なのですが、最近は大半のマンション事業者が評価を依頼しているようです。

 

これは、購入者に代わって住宅性能評価機関の専門家が工事状況を見に行ってくれるものと考えると理解しやすいでしょう。

工事中及び完成時に4回以上行くのが通例で、終了したら「建設住宅性能評価書」を発行することになっているのです。

 

主な評価機関には、(財)ベターリビング(財)日本建築センター日本ERI(株)(株)住宅性能評価センター(株)日本住宅保証検査機構といったところがあり、現在全国に100社・団体が存在するようです。これらの機関は、前述の「指定確認検査機関」を兼ねているのが普通です。

 

●インフラ対策

ライフラインとは、言うまでもなく水や電気、ガスといった生活して行く上で欠かせない社会基盤(インフラストラクチャー)のことです。

 

大地震によってライフラインが寸断されてしまったときの対策、つまり、非常用の電気・水道等の確保が重要な問題です。

 

千葉県浦安市では、11年前の東日本大震災当時、1か月を経過してもまだ下水道が使用できない地域が残っているなど、建物の損傷はなくてもライフラインが使えない被災マンションの存在がたびたび報道されていました。

 

このことが、俄かに非常用電源や水道などへ関心を高め、デベロッパー各社は、直ちに災害対応に配慮したマンション造りに動いたことが思い出されます。

 

マンションの敷地外でライフラインが切れてしまえば仕方ないものの、敷地内の水道管やガス管を保護すること、電気に関しても停電になったら、非常用の電源を確保してエレベーターを動かすこと、携帯電話等の電源を確保して備えようという動きが活発になりました。

 

電気、ガス、水道のうち、最も早く回復するのが電気ですが、それでも阪神大震災のときは、8日を要しています。 その経験からか、その間の不便さが賄えるくらいの能力を持つ大型の自家発電機を設置するマンションも生まれました。受水槽の水を活用できるようにした例も見られます。

 

水や食料、医薬品、救助・救護用具、簡易トイレなどの備蓄と、それらを格納する「備蓄倉庫」、飲み水を作る「非常用飲料水生成システム」、こうした災害対応の計画を取り入れる動きは、東日本大震災以降、中規模マンションでも増えています。

 

●電気の新たな確保策も

太陽光発電装置付きのマンションが急増の気配となった。いや、実際に増えています。まだ割合としては少ないのですが、一時的な流行ではなく、マンションの常識として定着しつつあるようです。

 

屋上に設置した太陽光発電パネルが作り出す電気は、主に共用部分の電気として使われるものですが、これを各住戸の電力としても使える能力の装置にする動きも見られます。

 

また、廊下や玄関ホールなどの共用灯が新築される殆どのマンションで消費電力の少ない LED電球に入れ替わっています。

 

●防災マニュアルの配備

地震対策は、建物のハード面だけに留まりません。 大手デベロッパーは、災害時に入居者が気をつけるべきことや、適切な行動のしかたを「防災マニュアル」としてまとめ、分譲済みのマンション各戸に配布し続けています。

 

防災マニュアルには、管理会社との連携も盛り込まれており、いざというときの「安心感」につながっていくものと考えられます。こうしたソフト面の充実も徐々に図られているようです。

 

マンションは一戸建てと違い、多種多様な設備が建物内にあります。また、ひとつ屋根の下に多くの世帯が住まう空間であることから、災害発生時においては、全世帯で共通の対応や連係した行動が求められます。

 

更に、地震のように突発的に発生する予測不可能な災害もあれば、台風などによる集中豪雨で想定できる水害もあります。

 

建築された年数の違いで附属設備が大きく異なることや、エリア特性もあることから、各マンションにおいて災害発生時にどのような対策が必要になってくるのかをマンションごとに検証する必要もあります。

このため、一律の防災マニュアルは作成しづらいようですが、共通項目も多いので、以下に示すような項目が「防災マニュアル」に盛り込まれつつあるようです。

  

.低層マンションは地震に強いのか?

高層階ほど揺れが大きいため、地震の恐怖から逃れたいという心理でしょうか、東日本大震災以来、超高層マンションを敬遠して中低層マンションを志向する人が増えているのだとか。

 

具体的な統計データではなく、マスコミによる業界とモデルルームなどへの取材を総合しての印象レベルではあるのですが、そうしたトレンドが一時(?)見られたのは確かです。

 

停電によってエレベーターが止まったとき、高層・超高層マンションは不便になると察知した人が多いと聞きます。 確かに、非常用電源装置があっても、使える時間は長くないし、傷病人が出たようなときの搬送に限って使用するなど、限度があるマンションが多いためです。

 

その点、低層マンションなら階段で上り下りができるので、さほど苦にならないという判断になるかもしれません。しかし、高層マンションでも、下層階の住戸を選べばエレベーターの問題は解決するので、理由はやや希薄です。

高層マンションより低層の方が揺れは大きくないというイメージがあるためでしょうか?

 

●低層マンションの特色を整理してみると

建築制限が厳しい場所にある

建てたくても低層しか建てられない土地に建っています。都市計画に定められた用途地域で言えば、「第1種低層住居専用地域」と「第2種低層住居専用地域」です。

どちらも1012メートル以内の高さ制限があるため、低層の建物しか建てられない地域なのです。

 

 建設地は閑静な住宅街にあるのが普通

元々、一戸建てを集合させようという場所が「低層住居専用地域」なので、高層の建物は建てられるようにはなっていないのです。

また、この地域には、高さ以外の建築制限もあります。具体的には、店舗はコンビニ程度の小型のもの以外は不可、カラオケ店、パチンコ、劇場、50㎡以上の駐車場などもできないのです。

従って、低層マンションの建設地は、ほとんど閑静な低層住宅地です。

 

 緑の多い地域であり、マンションの敷地内にも豊富な植栽が計画される

「低層住居専用地域」は、建ぺい率(建物の平面積が敷地面積の何%以内と定めたもの)が厳しく定められているため、建物と建物の間に余裕があり、その空地部分が庭などとなるため緑が増える傾向があります。

 

建蔽率は、「低層住居専用地域」では、最も厳しい40%以下という場所が多くなっています。

 

因みに、商業地域は80%が普通で、角地なら90%です。従って、商業地域では、建物と建物との間にすき間が殆んどない状態で建設されることが多くなります。

 

  戸数の少ない物件が多い

「低層住居専用地域」は、容積率も低く指定されているために敷地の大きさの割には戸数がたくさん取れないものです。

容積率とは、建物の延べ面積(各階の床面積の合計面積)が敷地面積の何倍までかを表わすもので、容積率500%と指定された商業地域では、敷地面積の5倍までの延べ床面積の建物が建築可能ということになります。

 

「低層住居専用地域」では、容積率が80%から100%程度と、極めて厳しく制限されているので、例えば1000坪の敷地を取得して低層マンションを計画したとしても、平均面積25坪クラスの住戸で構成するマンションなら40戸程度しか建てられないのです。

これが、容積率500%となっている場所であれば、200戸もできるのです。

 

 稀少性が高い

一戸建てが立ち並ぶような住宅街には、大きな土地の売り物が少なく、事業者がたまに取得できても、相続などでやむをえず手放す旧家の個人住宅跡地や、企業の役員用社宅跡地などに限られるため、敷地規模もあまり大きくないものです。

 

つまり、建設計画の件数も少なく、かつ戸数も少ないということになるので、低層マンションは稀少性が極めて高いということになります。

 

  高級物件が多い

敷地の利用に制限が多い地域では、マンション事業者としての採算に乗りにくい場合が多く、建てても高額な物件になりがち。

このため、購入する人のニーズに合わせて、建物グレードも高級なものにするのが普通です。敷地は緑で覆い、駐車場は地下に造る・・・などです。

 

管理サービスも充実しており、居住者の満足度は高いものになるのが普通です。その代わり管理費は1戸あたり5万円以上であったりします。戸数が少ないために管理人を常勤させれば、1戸当たりの管理費は当然高くなるのです。

 

●“低級な”低層マンションに注意

低層マンションの立地が高級住宅地にあるとは限りません。都市計画・用途地域の「低層住居専用地域」に指定されているとも限らないのです。

 

マンション建設の法的な制限はいくつもあり、高さに制限のない地域であっても、接する道路の幅員が4メートルしかない場所では、結果的に高さ10メートル程度しか建てられないことがあるからです。

 

そこに無理矢理4階建てのマンションを押しこむ形で建設する例があります。具体的には、1階住戸を半地下状態にして各階の天井高をぎりぎりで確保したりするのです。

 

このようなマンションのグレードが高級でないことは、賢明な読者なら容易に想像がつくことと思います。

また、建物がハイグレードではあっても、環境に問題のある場所も見られます。最寄り駅からバスであるため、生活が不便という物件もあります。マンションの価値を考えると、やはり疑問の残る物件と言わざるを得ないのです。

 

地震が怖いからというだけで低層マンションを志向するなら、それはちょっと待ってと言いたくなります。低層というだけでは地震に強いマンションとは言えないからです。

 

また、低層マンションの多くは、閑静な高級住宅地に立地する高級マンションであることが多いものですが、そうでない中級以下のマンションもあることを覚えておきたいものです。

 

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらからhttp://www.syuppanservice.com

 

三井健太の2大サービス「マンション評価サービス」と「将来価格の予測サービス」

・・・継続中・・・ご利用をお勧めします。

 

まとめて4件以内のショートコメントサービスもどうぞ

見学前のご利用がお勧め。肝心の部分に限定したショートレポートです。複数の候補があってお迷いのときに役立ちます。

  ショートコメントサービスの料金とお申込みは「三井健太のマンション相談室」でご確認ください➡http://www.syuppanservice.com

 

※こちらのBLOGも是非ご利用ください。

https://www.sumu-log.com/archives/author/mituikenta/(スムログ)

http://sumitaimansion.blogspot.com/(三井健太の住みたいマンション)

 

620日(787)以前の記事はこちらです 

https://mituikenta.com/


     ◆

     ◆

     ◆

  

コメント

このブログの人気の投稿

第789回 「コストカットマンションと業界の苦悩」

第798回 中古マンションの価値判断と探し方のハウツー