第795回 「マンション営業の“うそ八百”」

 

★ミニBOOK 「上手な自宅マンション売却の全て」進呈中」★

Contents 物件案内時の注意点(買い手に好印象を与えるコツ

●不動産売買は営業マンの営業力やヤル気次第

●高く売るコツは? ●実は何より大事なのは売主の印象

●物件案内時の注意点(買い手に好印象を与えるコツ)

●本当に専任媒介がいいの?   その他

  お申し込みはこちらへ mitui@syuppanservice.com

 

※ご自宅マンション売却のご相談もどうぞ

こちらから→三井健太のマンション相談室【物件評価申し込み】 (mitsuikenta.com)

 

2015年秋に発覚した、横浜市の「杭工事欠陥マンション(傾斜マンション)」事件。全棟建て替えとなった、この重大事件とは別に、購入者を困らせる問題はよく起こります。

 

筆者に届くご相談も契約上のトラブルに関するものが時々あります。筆者が関わった事例から5件を紹介します。頭の片隅に残していただければ幸いです。

 

●トラブルの事例集

*事例① 強引な営業手法で契約を誘引・・・契約1待って欲しいという買い手の要望をはねつけ、自宅まで印鑑と通帳を取りに行かせて売買契約の締結まで追い込んだ営業マン。

 

*事例② 説明の欺瞞による顧客誘導・・・分割分譲の1期に希望の住戸がないので今回は見送るという買い手を、次期は価格が大きく上がる予定との説明によって希望と異なる住戸で契約させられた。ところが、ふたを開けると価格は同面積20円しか違わなかった。その住戸に契約変更を要求したが一切応じてくれず、そのうちに希望住戸も他の買手と契約してしまった。

 

*事例③ 商談順位一番の買い手を裏切り、後順位の買い手と契約・・・中古マンションの売買において、売主の言い値そのままに購入意思を明確にした後、住宅ローンの事前審査も通り、あとは契約締結の日時を決める段になったにも関わらず、後順位の申込者と契約をしてしまった。仲介業者は、売主が買い手を選んだと言い訳。理由は不明。

 

*事例④ 近隣の新たなマンション建設で日照被害・・・契約から3か月もしないうちに近隣にマンション建設の告知。その計画を売主は知っていた可能性が高いのに説明は欠落していた。契約の解除をしたいなら手付金は没収と言われた。

 

*事例 土砂災害危険区域の説明が欠落したままで契約・・・物件の近隣エリアが危険区域であったが仲介業者は確認を怠り、重要事項説明書に記載していなかった。後日そのことに気付いた買い手が解約を要求し、最後は売主も応じたが、ストレスに苦しめられ、時間もかかった。

 

●契約上のトラブルで勝てない買主

上記の事例は、最終的には無事に無償解約に至ったので、どちらかと言えば例外に近いものです。というのも、ほとんどのケースは買い手の泣き寝入りになるか、手付金の放棄かのどちらかになってしまうからです。


新築の売主であるデベロッパーにせよ、中古を斡旋する仲介業者にせよ、マンション販売に関わるプロは宅建業法などの法律を遵守しています。不動産業は別名「クレーム産業」と卑下、もしくは揶揄されて来た歴史を持っているだけに、いわゆるコンプライアンスに関しては昔から堅実な業界です。


法すれすれの仕事(主に営業)は存在するものの、一線を超えることは殆どないのです。トラブルの元になりそうなことは、必ずどこかに表記していて、そこをよく見なかった買い手が悪いという結末になりやすいのが実態です。

 

事例④の日照被害でも、商業地には日影規制はないので、買い手は新規のマンション建設を反対できないことはもとより、購入したマンションの売主に対して「そんなの聞いていない」とクレームをつけたとしても、「近隣の環境は、合法的建築物によって将来変わる可能性があります」という重要事項説明書内の文言を指して対抗して来ます。

 

事例②の第2期の価格が上がるという説明も「あくまで予定なので、変わることもあります」と逃げられたのです。担当者が、「具体的に〇〇〇万円上がる」と言った覚えはないと白を切るばかりの卑怯さを平気で押し通す始末。

しかし、価格表などのコピーをくれたわけでも、ボイスレコーダーで証拠の声を記録していたわけでもないので、最後は泣き寝入りです。

 

事例①の場合も、契約書に記名・押印してしまった以上、法的にはどうしようもないのです。

 つまり、まともな方法(正攻法)では勝ち目はないと言わざるを得ないのです。筆者の経験では、法律闘争でない世界に売主を引きずり出すことで買い手の損害を最小限にすることは可能ですが、解決までの時間はストレスも溜まります。

 

●こんなはずではなかった”の数々

契約してから気付いても遅いので、注意すべき点をお伝えしましょう。ここはとても重要です。

 

①電線の位置・・・・・電線の位置を外観パース(完成予想図)に書き込んでいる例はありますが、細い線で気が付かないレベルです。完成済の物件では起こらないことですが、完成内覧会でリビングルームの正面に無粋な電線が走っているというのでは、興ざめするだけでなく価値も下がるというものです。

価格表と間取り図ばかりに集中すると、気付きにくい問題です。

 

  下がり天井の高さと幅・・・・・飾り天井として美しいものは別ですが、単に排気ダクトのためや大梁のために下がっている天井は、でこぼこしているだけで美しいものではありません。圧迫感となって快適性を損なうことも多いものです。

下がり天井の位置を平面図の点線並びに数字の表示によって確認することはできても、立体的にイメージするのは一般の買い手にとって至難のことです。  

しかし、例えば4.5畳大の洋室の真ん中あたりに、幅60センチの下がり天井が40センチも降りて来るようであれば、立面図はちょうど凹の文字に似た部屋となるのです。梁下寸法は2000ミリ前後しかありません。その圧迫感は尋常でないのです。  

下がり天井の位置が部屋の隅にある分には、家具の高さを注意すればすみますが、どのあたりに、どのくらいの幅で下がっているかを平面図で確認し、かつ立面図を描いてもらいましょう。

 

 エントランスホールの天井高・・・・・高級マンションのはずなのにマンションの顔たる玄関が貧相だと怒っていた買い手がありました。 低層住宅街なので全体の高さが規制されている中、エントランスを2層吹き抜けにするなどはできない相談だったのかもしれませんが、完成したときの第一印象で大いに落胆するマンションとなっていました。 

 仮に、そうであることを最初から分かっていたら買わなかったかどうかは断定できませんが、優越 感を味わいたい志向が強い人にはショックです。

 

  玄関ドア上部の天井高・・・・・各戸の玄関も同様です。ここは殆んどのケースで大梁が走っている場所ですが、中には梁下のドア高が低く、とても狭苦しい印象の玄関になっている場合があるのです。新居の完成を楽しみにしていた買い手を落胆させる残念な設計です。

 

  玄関側の寝室の採光・・・・・田の字型と言われる間取りには玄関側に寝室が2つレイアウトされています。その寝室が北向きであっても窓が大きければ外光が十分に入って来るのですが、昼間でも照明が要るというケースの方が少なくありません。

  サービスルームという表示なら、法的な採光基準に満たさない「納戸」扱いになりますが、普通に洋室と表示されてあれば、最低限の光は入ることを意味しています。 

  問題は、最低限しかないという点です。目の前にエレベーターがあると、採光基準を満たさなくなるので、窓を斜めに取ってエレベーター塔を避けるのが常道ですが、それでも窓の正面にあると暗い感じは抜けきれないのです。

  できたら、斜め窓の洋室がある住戸は避けたいものです。斜めになった窓には注意しばければならないのです。

 

ルーフテラスの出入り(またぎ高)・・・・・ルーフテラス(バルコニー)は、上部に庇がないた め、雨の吹込みを防止するために室内の床とテラスをバリアフリーにすることができません。つまり、床からコンクリートを何十センチか立ち上げてあります。

 

問題はその高さです。立ち上げられた部分をまたがなければ出入りができないので不便です。高さが浴槽と同じ45㎝程度なら許容範囲ですが、60cm70cmもあったら、窓のそばの室内と場合によってはテラス側にも常にステップ(踏み台)を置かなければなりません。

そんな不便なテラスでも、専有面積の同じ他の住戸より何百万円も高く販売されます。図面集には必ずまたぎ高が表示されています。見逃さないようにしたいものです。

 

⑦エレベーターに接する寝室・・・LDKタイプに多いのですが、エレベーターに接する住戸があります。その住戸は、エレベーターシャフトに接する面をトイレや浴室等の水回りで固め、寝室は配置しないのが常識になっていますが、稀に寝室が隣という間取りを発見します。

言うまでもなく、壁を二重にするなどの防音対策を施しているものですが、それでも完璧な防音はできないので注意しなければなりません。

 

⑧上下階・左右の音・・・・・他の住戸からの音漏れや音の伝播は、残念ながら完全に防ぐことはできません。住まい手の生活ぶりによって異なるので、受忍限度を超えることもあり得るのがマンションです。

安普請の賃貸マンションや木造アパートに比べれば、遥かに遮音性能は優れていますが、期待度が大き過ぎると落胆の度も大きくなります。

 

入居したら、向こう三軒両隣、更に上下の隣人に挨拶することをお勧めします。顔を見知っているだけでも、お互いにトラブルは予防できるものだからです。

 

後悔しないために

商談では、念のためボイスレコーダー(レコード機能付き携帯電話)を準備しましょう。そして、声、メール、メモといった証拠になるものを残すようにすることが大事です。「言った・言わない」の問題が多く、結局は泣き寝入りになりかねないからです。

 

まさかと思うようなトラブルが、相手が大手業者であっても起きます。予防のためにお勧めします。

また、営業マンに何かを強要されてお困りのときは「親戚に詳しい者がいるので相談してから返事します」と一旦かわしてください。ご相談くだされば、にわか親戚の筆者が即日または翌朝までにご返事します。

 

不動産って、そんなふうに警戒しつつ買わなければならないのかと、暗たんとした気分になるかもしれませんが、すべては安心・安全な取引のためです。

 

●解約したいと思う事情・理由

さて、解約したいという理由の多くは「見学から契約までのスピードが早過ぎ、じっくり考える間もなく決断を迫られ契約してしまったが、とても後悔している」というものです。

 

どのような物件でも完全無欠はなく、どこか気に入らない部分、欠点、短所があるもので、そこを妥協、または軽視して決断するのが現実です。しかし、他人から見れば「そのくらいのこと」でも、あとで「やはり我慢できない」と思い直したりするものです。

 

また、「契約前には気づかなかった欠点」が契約後にクローズアップして来て「いやだ」となるケースも見られます。

担当営業マンから説明はなかったので「聞いていない」とクレームをつけると、「図面集に書いてあります」とかわされ、確かに良く見れば小さな文字で表記されています。よく見なかった買い手が悪いと言わんばかりの対応に腹が立っても後の祭りというわけです。

 

●情報は集めることより整理。その具体例

筆者の偏見かもしれませんが、批判を恐れず書きます。インターネット時代になって情報集めは手軽になりました。しかも早いので、有難い話ではあります。しかし、インターネット情報は玉石混淆です。

 

正しい情報もあれば、悪意に満ちた情報、いい加減な情報、誇張した批判、ただの受け売り意見などが氾濫しています。情報洪水と言える状況です。

これらの情報に振り回される人も多いのではないかと思います。マンション選びに関しても、間違った情報、誇張された情報、曲解された情報や意見、古い知識や偏見、固定観念、先入観が飛び交っています。これが、買い手を惑わせ、混乱に陥れるのです。

 

インターネットが情報過多時代を招きました。簡単に情報が手に入るだけに、情報整理術が重要になったと言えます。

理想と現実のはざまでもがいている人にたびたびお会いします。

一世一代の大きな買い物をするのだから失敗したくないと書物を何冊も買って読み、インターネット上の様々な情報を仕入れて勉強している人は、マンション購入者の中の大多数のはずです。

 

多くの専門知識を身にまとい、業界用語にまで通じている人もいます。市場の状況も下手な芸業マンも形無しなほどに知っています。 10件も20件も、最新の物件情報に関して細部にわたり把握していたりするのです。しかし、実はそこに落とし穴があるのです。

 

マンションに関する知識と情報に通暁しているのに(と、本人が思っているのに)、いつまでもゴールに達しないで、そのうち機会を失ってしまう人は少なくありません。

このような人の失敗原因のひとつは、「知識と情報の洪水をかき分ける能力」か「情報整理が上手でない」ことにあるのだと思います。言い換えると、頭でっかち状態になっていて、「私は何でも知っている」を力に換えられない性分なのかもしれません。

 

10年ほど前から「断捨離(だんしゃり)」がちょっとしたブームになっています。 断捨離とは、不要なモノなどの数を減らし、生活や人生に調和をもたらそう とする生活術や処世術のことだと聞きます。

マンション選びの場合に置き換えれば、たくさんの知識と情報を断捨離することが後悔しない選択の基礎的な条件ということなのでしょう。

 

世の中には、教養は豊かだが、それを人生にうまく活かせていない人がいると聞きます。それと同じです。何でも知っている割には、いつまでもマンション選びができないでいるからです。

 

マンション探しで迷ったときの整理術

東京圏の一部エリアでは、物件固有の条件によるとはいうものの、10年経っても値下がりしないどころか、値上がりしているマンションもあるのは確かです。 しかし、本来、建物は完成したときから老朽化が始まるのですから、経過年数によって価値が下がるのは当たり前とも言えます。

 

同じ中古マンションでも、値上がりするマンションと値下がりするマンション。この差は、どこから来るものでしょうか?既に述べて来たことですが、それは、需要の多寡によって生まれる結果と言い換えられます。

 

東京の人気住宅地ではマンション開発が難しく、新築マンションは滅多に販売されません。いきおい、そこに住みたい人は中古へ向かうしかないわけです。

その結果、人気住宅地の中古マンションは値が下がりにくいという傾向が続きます。 


反対に、首都圏でも10で新築時の半分に下がってしまった極端な例が少なからずあります。これは、その地域における需要が供給を大きく下回るためですが、それだけでもありません。 

その地域の中でも条件が特に良くない物件だからです。何がよくないかを一言でくくることはできませんが、物件固有の条件によることだけは確かです。


需要の少ないエリアでは中古価格は下がりやすく、需要の高いエリアであっても、固有の条件によっては、やはり下がります。 

どのような地域にせよ、少しでも高く売れそうな物件を選びたいものです。


とはいえ、条件が全部揃うマンションは中々ないものです。従って、あちら立てればこちらが立たずと悩み・迷う買い手さんは少なくありません。

 

●整理術(その1)

そこで、優先順位を設けて後順位の枝葉末節部分は切り捨てるような選択態度が必須です。それでも簡単ではない現実があるようです。次のようなご相談事例が最近ありました。


「駅に近いことを優先するべきであることは分かるが、駅近物件には満足できるものがないと悩んでいたが、そんなとき、駅から少々遠いこと(徒歩12分)を除けば満足度の高い物件を発見。

駅近を優先順位のトップに掲げて探して来たが、それを捨てても購入したい。 

だが20年くらい住んだら売却するか賃貸する予定なので判断に迷う。あまり高くは売れそうにないし、賃貸するにしても家賃は高く取れない。 が、環境も建物の内容もいい。どうしたものか」と。

 

このような場合、次のように考えを整理してみることをお勧めしたいと思います。

*売却や賃貸は、20以上も先のこと。そこまで予想するのは本来難しいことである

*住まいは何のためにあるのか?日々の暮らしを豊かに送るための基盤ではないのか。駅から遠いという問題はあっても、さほど苦にならない程度なら、そちらを選択してもいいのでは?

20後に売却するとき、値下がりは間違いないだろう。でも、下がり方が極端でなければいい。その許容範囲は、どのくらいだろうか。単純に金銭的な損得だけで判断してみる20年マンションの価格は今、いくらかを調べてみたら大まかな予想はできるかもしれない

20年後に購入価格の半分になったとする。 しかし、住宅ローンは半分以上返済が進んでいるので、銀行の精算をしても手残りがある。少なくとも頭金以上の金額が残る。これなら損はない。 仮に、売却せず賃貸したら、駅前物件ほど高くは貸せないが、ローン返済に充当できるくらいの額は取れそうだ。とすると、最終的にはローンなしの物件が残る。そのときに売れば、更に売値が安くなっても手残りは大きい。

*仮4000万円の借り入れをした場合、20年後に残金はいくらになっているかをネットのローン計算ソフトで計算してみると、35年返済、固定金利1.2%の固定金利の場合、残債は1920万円。 仮に頭金500万円で4500万円のマンションを購入した場合、20年後に半値の2250万円になってしまったら、ローンを精算すると手残りは僅か330万円だ。 頭金500円や初期投資の各種費用もあるので、半分も戻らない計算になる。

*毎月の返済額116000円と管理費等を合計した金額が約15万円だから、これでは、賃貸マンションに住んだ場合と負担は変わらない。とするなら、賃貸マンションの方が良いかも。本当にそうなったとき、きっと暗澹たる気持ちになることだろう。 しかし、そのままローンが終わるまで保有したとき、半値をさらに下回るとしても1500万円くらいにはなりそうなことに希望が持てる。

*それに家主に気兼ねして住む家とマイホームでは満足感はまるで違うではないか

 

百点をつけられるような理想的なマンションはそもそも存在しない、必ず気に入らない点や懸念点が一つ二つはあるのです。上記のような例を参考にしで、優先順位をつけながら自分の考えを整理してみましょう。

 

●整理術(その2)

居住性も高く、且つ将来の資産価値も高い物件を望みがちです。しかしながら、それには予算を大幅に上げなければならない場合も多いことでしょう。

それが可能な人は、値下がりの小さい都心の人気エリアに求めればよいですが、簡単に行かない人はどうしたらよいのでしょうか?

このような場合は、次のように方針を決めて探すというのはいかがでしょうか?

 

*そもそも家を買うのは何のため? 老後のことを考えたら賃貸マンションで良いわけがない。それに家賃が勿体ない。だから家は買う。この考えをしっかり固めておく。

*マイホームは、日常生活がしやすいこと、快適な暮らしが基本。通勤・通学の便が良いこと、子供のいる家庭では子育てがしやすい環境にあること等が大事である。

*住宅ローンに追われるようなストレスはない方がよい。つまり、無理な資金計画のもとに買ってはいけない。

*駅近で、かつ広い住戸を求めても無理と分かったら、広さを我慢して駅近を選択する。我慢の範囲は、現状の住まいにプラス10㎡(例)などと定め、欲張らない・高望しないこととする。

*我慢できる広さの物件がないときは、駅からの距離を少しだけ妥協するが、バス便だけは避け、徒歩10を許容限度と定める。または、中古物件を探す。立地を優先する。これは、将来の売却価格が下がり過ぎないことを考慮した選択である。

*売却の時期は10以内を目安とし、その間の暮らしに支障がない広さでいい、次にランクアップすればいいと割り切る

 

・・・・このように整理してみてはいかがでしょうか?

 

●整理術(その3)

新築が高いので、中古に方向を変えてみたが、良い物件に出会えないま1が経った。

振り返ると、いいなと思った物件もあったが、一足違いで買えなかったり、良さそうに思った物件は内見に出かけてみると、目の前に隣のマンションが壁のように立ちはだかっていたりと縁がない。

 

ときどき新築に戻ったりもしたが、高過ぎると思った。 中古は、新築に比べると設備は古いし、わくわくする気持ちがわいて来ない。リノベーション中古も見たが、新築のモデルルームのような感動を味わったものの、築年数40年と聞いて怖いと思った。

 

・・・・・このような人は、次のように整理してはいかがでしょうか?

 

*中古で良さそうな物件を見つけたら、リフォームを前提とする。つまり、室内に関しては鼻から期待しない。ただし、全面的なリフォームではなく、間仕切りは壁紙を貼りかえる程度に抑え、一部の設備を交換するだけと割り切り、リフォーム予算は300万円、500万円などと決めておく。

*中古物件の候補地を複数決めておくが、駅から徒歩5分以内を厳守する

*建物は、ブランド力にはこだわらないが、少なくとも100戸以上の規模があり、外観デザインに優れたものとする。

*築年数はできたら新しい方が良いが20年くらいまでは良しとする。

*バルコニー前面の建物まで30メートル以上の距離があること、もっと近くてもいいが、その代わり屋根を飛び越えて遠くを望めることを条件にする。

*見学に行っては裏切られることの繰り返しだったので、物件紹介サイトに眺望写真が載っているもの、若しくはグーグルマップで隣接マンションとの距離感をチェックして問題なさそうなものだけを見学する

*場合によっては3階以下の物件は候補から除外する

*新築も諦めないが、竣工時期が1年以上であるとか、価格が未発表の物件は候補から外す


 

モデルルームに騙されるな)

「恋は盲目」と言いますが、それと同じ状態の検討者にお会いすることがあります。

建設地が「普通で嫌悪感がない」ときに起こるようです。

建設地を確認して気持ちが後退してしまうような場合は冷静になれるものですが、建設地の雰囲気が特に印象に残らない「普通の場所」の場合は、モデルルームを見て感激し、一気に購買意欲は盛り上がるのです。

 

印象に残らない普通の場所なら、買ってしまったとしても大きな失敗にならないかもしれないが、雰囲気が良いだけでは良い立地とは言えませんし、建物もモデルルームが素晴らしいだけでは価値あるマンションとは言えないのです。

 

しかしながら、モデルルームを見るのが初めてだったり、初めてでなくとも前のモデルルームとの違いに大きな感動を味わったりすると、舞い上がってしまい他が見えなくなるものです。

「こんな素晴らしい人に会ったのは初めて」と感じた瞬間に恋心が沸き上がるのと同じで、素晴らしい演出がなされたモデルルームを目にしたとき、盲目になるのです。

 

マンションの価値を決めるのは、室内の設備やインテリアではないのです。無論、それも価値の一部ではあるのですが、もっと大事なものがあることを「うっかり見落としてしまいます。優先順位は別のところにあるのです。

 

自分たちの感性にフィットするモデルルームに一目惚れして買うことをいけないとは言えませんが、結婚相手を決めるときに大事なことは見た目の良さだけでないのと同じで、買おうとしているマンションの何処を見て買えばいいのか、そこを忘れてはなりません。

 

しかし、痘痕も笑窪状態に陥り、盲目になっている自分に気づかない人は、営業マンの押しの強さに負けてふらふらと契約をしてしまったりします。契約してしまったら手遅れです。解約するには手付金を棄てるしかありません。

 

気に入って買い、快適に住んで行けるなら何も問題はないのです。つまり、痘痕ではないのですから。 

ところが、契約してからしばらくして間違いだったかもしれないと気づく人も多いのです。中には、建物が完成して内覧会に至って気付くこともあります。そして後悔します。

 

どんな後悔でしょうか?例を挙げておきましょう。

 

*こんなに天井が低いとは思わなかった

*ルーフテラス付きのマンションを買ったが、使い道が少ないと分かった

*男の子がいるので1階を選んだが、庭が意外に狭く、目隠しの植栽も鬱陶しいと感じた

*隣の家の屋根がこんなに近いとは思わなかった

*エレベーターの速度がとても遅いと感じた

*タワーマンションを買ったが、朝はいつもエレベーターの5分待ちを強いられる

*裏を走る電車の音が反響して来るとは思わなかった

*契約後に他と比べたら管理費が随分高いことが分かった

*長期修繕計画書をもらったが、20年後の修繕積立金が5倍に跳ね上がることを知った

*管理費が安いのは魅力と思ったが管理人不在の巡回管理だった

*駅前で便利だけど、若者がたむろする場所があって夜はいつも騒がしい

*駅から5分の高台にあるのはいいが坂道なので夏はいつも汗だく

*感動が薄くなった高層階の景色

*広くて豪華なロビーが子供の遊び場になってしまった

*北向きマンションの冬の寒さに辟易する

*角部屋の欠点は壁が少ないため家具が置けないことでした

*角住戸比率が高いので価値があるマンションと信じたがペンシルビルだった

*ホテル並みの内廊下というフレーズが心地よかったが、狭くて豪華さからは遠いと思った

5年経って気付いた「小学校が徒歩30と遠い」こと

10年経って気付いた「相場の2割高マンション」であった


 

不人気で売りにくい1階住戸。そのわけは?

1階住戸は売りにくいことから、マンション不況の折には、マンションメーカーも随分知恵を絞ったものでした。

和室があれば掘り炬燵を設けたり、畳1枚を電動で持ち上げて収納スペースになったりする製品を組み込んだり、オーディオルームなどとして使える地下室をつくったりしたものです。

中には、核シェルターになる部屋をつくった例もありました。また、北側の玄関を勝手口にし、南の庭側に表玄関を設けたタイプもありました。 単純に1階住戸だけ天井高を2650ミリ(2階以上は2500)にした例もありました。

 

庭に離れの部屋を設けたユニークなプランもありました。そんな中で今もポピュラーな形態が、「専用庭付き住戸」や「専用駐車場付き住戸」です。

一方、定番になりかかって、その後消滅したのが、「掘りごたつ付き和室」と「深さ1メートル余・広さ4.5畳余といった大型床下収納付き住戸」でした。

 

1階住戸は何故売りづらいのでしょうか?以下のようなデメリットがあるためと考えられます。


 1)寒い・・・・・1階住戸は断熱材を入れて対策しているのですが、サンドイッチ住戸(上下左右にお隣さんがある家)のような効果は出にくいのです。

 
2)防犯面の不安がある・・・・・防犯センサーを窓に取り付けてあるので、外部侵入があれば直ちに防犯ベルが鳴り響き、管理人や警備員が駆けつけるようになっていますが、戸締りの心配が少ない上階とでは心理的負担の差は小さくないのです。

 

3)プライバシーの確保が難しい・・・・・庭側に垣根を設けていますが、人通りのある公道に面しているような場合、いつも覗かれる心配をしなければなりません。

 

4)日当たりが悪い・・・・・前方にアパートなどの既存の建物があるケースでは、接近度によって日照が悪くなります。

 

5)眺望がない・・・・・もう語るまでもなく、1階で遠くを見渡すことができる住戸は傾斜地に建つ特殊なもの以外ありえません。

 

1階住戸を選択する人は、家の中を走り回る元気なお子さんがいる家庭です。下の階に迷惑をかけるからというのが理由です。しかし、こうした家庭も、やがては聞き分けの良い子供に成長します、迷惑をかけるのは一時のことです。 

1階住戸はリセールが大変だったと後悔する可能性が高いことを肝に銘じて慎重に検討しましょう。


 

買い手が落としがちな「重要な質問集」

問えば答えるが、問われなければ説明を省く。そんな営業マンのクセを特集しました。これは、買い手が質問すべき事柄として記憶したい重要なものでもあるのです。

 

営業マンは、しばしば「この欠点や弱点に気付かないでほしい」と願っている、もしくは「欠点・弱点と感じないでほしい」と祈っていることがあります。

問われれば答えるしかないが、うかつに自分から触れればヤブヘビになるかもしれないと考えて口を閉ざしているのです。

 

都合の悪いことは黙っている。これは、業界を問わず営業マンの習性とも言えるものです。そうであれば、トコトン質問をして物件を深く知るか、何を質問すれば分からない人の場合は、事前ので自衛するしかありません。

 

気づきにくい事柄や忘れがちなチェックポイント=質問集を以下に箇条書きします。ご検討のツールになれば幸甚です。

 

●建設地に関する問題

※騒音・・・・・(前面道路の交通量・騒音の程度は自分で体感するしかありませんが、販売時は建物が未完成のためグランドレベルでしか体感することができません。それなのに、営業マンは騒音の程度に関して何も語りません)


※液状化しやすいエリアにある・・・・・ (この告知をしてはくれません。安全度が高いエリアの場合のみパンフレットに表示する)


※水没危険エリアにある・・・・・ (同上)


※駅から遠いこと・・・・・ (その弱点には触れて欲しくないのです)


 隣地の再建築について・・・・・ (将来のことは全く分からないものの、想定できる範囲を知っておきたいのが購入者心理です。 しかし、目の前が駐車場など、危険とすぐに気づく場合以外、想定できる建物の規模・高さなどを主体的に説明してくれません)

 

●構造に関する問題

※耐震性 ・・・・・(耐震性能の最低ランク「等級1」のマンションの場合、ことさら説明はしません)


※直床構造・・・・・ (二重床の場合は、そのメリットをわざわざ説明することはありますが、直床=じかゆか構造の場合は説明をしません)

 

※耐久性・・・・・ (コンクリートの劣化対策などを説明することはあっても、耐久性が高いことの意味、すなわち資産価値にどう影響して来るかなどの説明はしません)

 

その他の設計上の問題

※南向きマンションの北側個室のこと・・・・・ (真南に向く間取りの場合、玄関側に配置される個室は真北を向くことになるのが当然であり、窓も北向きになっているのが普通です。しかし、北向き個室のデメリットには触れたくないのです)


※東西向きの住戸・・・・・ (東向き、または西向きの間取りにはデメリットもあればメリットもあるのですが、その説明を主体的にすることはありません)


※個室の窓が斜めであること ・・・・・(玄関側の個室の窓は廊下に対して平行に設けられるのが普通ですが、ときどき斜めになっている間取りを見かけます。わざわざ曲げているのは採光を遮蔽する何かがあるためですが、その説明をしてくれることはありません)


下がり天井のこと・・・・・ (下がり天井はほぼ全部のマンションに誕生します。しかし、それが目立たないケースと強い圧迫感をもたらすケースがあります。その位置と天井高をCH=2000などと表記されていますが、そのことに気付かない買い手も多く、完成後の内覧会で落胆する人も少なくありません。事前の説明は一切してくれないからです)

 

※ルーフテラスへの出入り・・・・・ (ルーフテラスに面する窓の高さは床から5060センチもあるケースが少なくありません。つまり、バリアフリーではないのです。窓をまたがないとテラスへの出入りはできないのですが、図面に表記はしても説明はしてくれません)


※エントランス真上の住戸の騒音 ・・・・・(マンションの2階住戸を購入する場合に注意したいことは、下階が何かです。共用玄関の場合、ドアが自動式になっていれば、その作動音が響く可能性はゼロでないと考えなければなりません。しかし、そのような告知はありません)


※ピロティ上の住戸の懸念点・・・・・ (元気な男の子を持つファミリーの場合、下階のお宅に迷惑をかけたくない一心で1階住戸、または1階が駐車場になっている建物なら2階住戸を購入する例があります。後者の場合に気を付けなければならないことが2点あります。

それは、床の断熱と駐車場の騒音対策です。駐車場は機械式2段駐車であったりします。その場合、車の出入りによる騒音が心配なはずです。また、上下を住宅でサンドッイッチされていない住居は一般に冬は寒いと言われます。こうした懸念を払拭するための対策に関しての説明はしてくれないのです。


※地下住戸の問題点・・・・・ (低層マンションでよく見られる地下住戸。湿気対策、通風、日当たりなどに問題のあるケースも見られます。その買い手不安を汲み取って説明してくれる売主・営業マンもありますが、図面表記だけで済ます例も多いのです)


※エレベーターの数の不足・・・・・ (意外な盲点のひとつです。コストダウンの一環で必要十分とは言えない台数で抑えているケースでは、それに関しては何も語らないのが常です)


※住宅性能評価書の意義・・・・・ (住宅性能評価書のない新築マンションは10%もないほど普及して来た現状ですが、性能自体が普通のマンションの場合、その中身について深く語ることはありません。第三者機関による評価だから安心ですなどと説明するだけに留めているのが実態で、評価書を渡せば事足れり、としているのです)

 

●事業者に関する問題

※施工会社のこと・・・・・ (二流・三流の、または無名のゼネコンを起用するケースは少なくありません。ゼネコンの知名度は、業界人ならよく聞く企業でも、一般の買い手から見れば低いものです。そのことが不安心理を呼ぶのですが、触れたがらない売り手がいるのも事実です)


管理会社のこと ・・・・・(管理会社の能力や経験、特徴などに関しても同様です)


売主(自社)のこと・・・・・ (自社のブランド力が決して高くないのに、買い手が安心感を持つまでの説明はしてくれません。説明が難しいのも事実なのですが)

●販売や管理に関する問題

売れ行き・・・・・ (よく売れている物件なら良いものに違いないと思いたがるのが買い手心理です。ゆえに、買い手は販売状況を知りたいのですが、売れ行きが「並み」の物件はそれを隠すのが売主心理と思った方がよいのです

聞けば、「おかげさまで順調です」くらいの答えは返って来ますが、そう語っていた物件が竣工後1年経って売れ残りを抱えている例はたくさんあります)


値引き提示の理由 ・・・・・(買い手から要求をしたわけでもないのに、営業マンの側から「今週中に結論を下さるなら〇〇〇万円お引きします」などと提示して来ることがあります。

「決算期なので」が最もポピュラーな値引き理由ですが、本当の理由は単に販売促進のために値引くのです。計画通りに販売が進んでいない証拠ですが、「売れないから」とは言うはずもありません)


管理費・修繕積立金が高いこと・・・・・ (管理費等が高いか否かは基準を知らない買い手には判断しにくいものです。規模や高さによって管理費等は割高になってしまうのですが、数字を提示するだけです。「割高なマンションではございますが・・・」などとは決して言いません)

 


マンション営業の“ウソ”を深堀りする

マンション・不動産業界には独自の「公正取引協議会」という誇大広告やウソの広告を監視する機関があることをご存知でしょうか?

正式には【公益社団法人 不動産公正取引協議会】というのですが、「不動産の表示に関する公正競争規約」(不動産広告のルール) 及び「不動産業における景品類の提供に関する公正競争規約」(景品提供のルール)を全国9地区において運用するために設立された不動産業界の自主規制機関です。

 

関東甲信越地区の「首都圏不動産公正取引協議会」は昭和38 年に設立されたとあるので、長い歴史を持っています。

自主規制ですから、自ら襟を正して公正な取引、適切な不動産取引をして行こうという趣旨によるわけですが、これは逆に考えると、昔はそれだけ悪質な広告や販売・営業がまかり通っていた証左なのです。

 

悪質な事例を同会の広報誌で何度も目にしたことがありますが、「おとり広告」はその典型です。実在しない優良な物件を広告で使用し、レスポンス客には「さっき決まってしまいました。遜色ない別の物件がありますので、そちらをご案内しましょう」というのが常套手段でした。

 

また、駅から徒歩10 分の一戸建ては、実際は車で10 だったという、信じられないようなインチキな販売方法も昔は多数ありました。 どちらも一戸建ての事例ですが、マンション販売でもこれに近い営業手法は存在したのです。

 

現在、このような悪質な例は消滅したと言われますが、ルール抵触ギリギリの広告・販売(営業)は今も巧妙に続けられています。

以下で、嘘ではないが真実でもない、「ウソっぽいマンション営業」をご紹介します。

 

●即日完売のウソ>

売り出したその日のうちに、若しくは登録受付期間と称する1 週間のエンドで全戸が完売に至ったとき、これを即日完売と言います。正確には登録申し込みが全戸に入ったということであって契約はまだ先なのですが、業界では「即日完売」または「即完」と称しています。

 

販売予定戸数をいっぺんに売り出さず、小出しに分割して販売していく「分割販売(期分け分譲とも言います)」では、初回で即日完売になった場合、次の回で残りの何割かを売り出す際に、即日完売という事実を宣伝に利用しない手はありません。

そこで、売主は即日完売するほどの人気だったとアピールし、次期の即日完売へつなごうとします。

 

しかし、実際はどうかというと、登録はしたものの、キャンセルは自由にできるので気が変わったから購入手続きには行きませんという人も少なくないのです。従って、しばらく経つと空き住戸が何戸も出て来て、契約完売には至っていないのが実態です。

このようなケースを「ウソ」と決めつけるのは言い過ぎですが、このような実態を知っておいて損はないでしょう。

 

ところで、即日で完売するなんて高額商品でありえることでしょうか?

当然ながら事前の宣伝で商品内容を明らかにし、一定の時間をかけて関心客を動員しています。その中から、実際に買ってくれそうな客が何人いるかの読み(選挙の票読みのようなもの)を働かし、一定の数に達したら、その数だけ売り出すのです。

 

つまり、即日完売はそうなるべくしてなるわけです。初めから即日完売になるようなスケジュールが組まれているということです。

100 戸を一気に売りたいなら、確実に買ってくれそうな客が100 に達するまでプレセールスを続けるということでもあるのです。

 

このため、広告が何度も繰り返されながら、なかなか発売日(登録受付日)が明示されない物件は少なくありません。

 

●新発売のウソ

日本人は「新しいものが好き」らしく、何でも「新」がつくと期待感を抱き、同時に古い物より良いものという先入観を持つようです。 この心理を利用し、「新製品」「新型〇〇」「新発売」「新版」などの言葉が頻繁に登場して来ます。

 

マンションでも「長いこと売り出し中です」という広告よりも「新発売」の方がイメージは良いはずで、関心客も多く獲得できると考えるのです。

 

そこで、完売までに半年、1 年を要する場合は、「新」のイメージを持続させることを狙います。そのためには、分割販売方式により、「第1期・新発売」、続いて「第2 期・新発売」・・・・・「第5 期・新発売」などという広告表現を繰り返します。 ここにウソはありません。しかし奇妙です。

 

●売れ行き・在庫を隠す

マンション販売では即日完売を期ごとに達成して人気を演出したいのが売り手のホンネです。1 1 次・2 次・3 次 連続即日完売(計000 戸)」と大書してあるチラシをご覧になったことがあると思います。

また、「2020 年度〇〇県内一の供給(販売)戸000 戸を達成」といったコピーに気付かれた人もあると思います。

 

これらは、「売れゆきの良さ」、言い換えれば人気マンションであることを誇示しているわけです。

同時に、未発売分を早く売りたいので「人気物件だよ。早く来ないとなくなるよ」とアピールしているわけです。このようなケースは、全部で何百戸あって、既に000 戸売れたと言っているので、残りは00 戸とたちまち分かる広告であるわけです。

 

反対のケースはどうでしょうか? 調査員や同業他社の暇な人物、同じエリアで競合する物件を販売するライバル社などは、ターゲット物件を追いかけているので、「ここまでに何回に分けて何戸売り出した」というデータを記録しています。

 

しかし、一般の買い手にとって、よほどの執心でない限り、特定マンションが合計で何戸売り出したかを知ることは簡単ではありません。 「今回販売戸数」という項目を見て最新の売り出し戸数を知るのみです。それまでの累計の売り出し戸数が何戸であるかが分からないうえに、何戸売れているかは全く分からないのです。

 

売れ行きは買い手にとって大きな関心事です。仕方なく、モデルルーム見学のときに営業マンに尋ねることになります。

しかし、販売不振マンションの場合、営業マンは必ず曖昧な答えでお茶を濁そうとします。中には真っ赤なウソであることもあるのです。入居してから、「あのとき7 割は売れていると聞いたのに、実際は3 割も入居していない。騙された」と買い手が憤るケースがたまに見られます。

 

ともあれ、広告では売れ行きも残り戸数も分からないようにしてあるのが実態です。

 

●価格未定の不透明販売>

戸数以外に、「見えない・見せないようにしている」のが「価格」です。予告広告では、価格を未定とするのが常態です。

買い手が最も知りたいのは価格です。そこを明らかにしない広告。知りたかったら、モデルルームに来なさいと言われているかのようです。

 

しかし、現地へ行っても、住戸ごとの価格表は正式決定ではないからと、見学者にコピーさえ渡さない。 これも業界の慣習のようになっています。数字の入っていない表を渡され、手書きしてお持ち帰りくださいと言われます。

 

価格を決めないままの販売活動がしばらく続き、やがて「要望」や「登録」という名の購入希望者の申込を受け付けるというスケジュールに至りますが、その寸前まで正式の価格は公表しません。

発売日ギリギリまで価格をベールに包んで明らかにしない。これもマンション業界の通弊になっています。

 

本当は決まっていても、顧客の反応を見て住戸別に微妙な調整(変更)をするためとして明示しないのです。 ウソではないですが、買い手にとってはどこか割り切れなさの残る対応ではないかと感じます。

 

●完成予想図のウソ

マンションに限らず、広告は商品が売れるように工夫するものです。 ウソはいけませんが、より良いイメージを持ってもらうように制作します。マンション広告の殆んど全てで採用するのが、全体像が見える「外観パース」です。いわゆる完成予想図です。

 

完成予想図の案が広告代理店から5 くらい提示され、どの角度から描いたものが最も立派に見えるかなどを会議で決めます。

 

ところが、この絵には電線・電柱が省略されています。近隣の建物が描かれていない例も多く見られます。それらを描くと、興ざめとなるからです。

また、しばしば誇張されたものであることにも注意しなければなりません。例えば、実際以上に高く見える外観や大きく立派に見える玄関、広々と見える敷地内庭園などです。

 

仏語では「デフォルメ」と言い、意識して変形させ、ゆがめることの意で、絵画の世界では当たり前の技法が使われます。そこに目くじらを立てるわけにも行きませんが、度を超せば買い手を「誤認」させるものとなるだけに放念できません。

 

●天井が高い。実は普通

当たり前のことでも、言い方ひとつで「すばらしい」ことに聞こえる・見えるということがありますが、広告でもこの手法が使われています。

 

ときどき、「一般マンションの天井高2400 ミリ。このマンションは2500 ミリ」という広告を見かけます。最近のマンション2500 ミリが普通であるのにです。特に優れているわけではありません。

しかし、研究し初めの買い手なら、それを真に受けることでしょう。そして「良いマンション」だと誤認するのです。

 

●ダブル配筋のしっかり構造。実は普通

マンションの耐震性に強い関心を抱く買い手が増えたためでしょう。

売り手は、当社のマンションは頑丈にできていると言いたいようです。そこで、壁がダブル配筋であることや柱の鉄筋を巻いている帯筋(おびきん)のつなぎ目を溶接していることなどを図で解説した広告やホームページを見かけます。 パンフレットにも必ずといってよいほど掲載されています。

 

これらは、当たり前のことを、さも特別なことのようにアピールして「良いマンション」だと錯覚させる手法だと言ったら「うがち過ぎ」でしょうか?

 

●二重天井は当たり前

二重天井も当たり前のことです。ことさら広告で強調することではありません。ほかにアピールすることがない平凡な物件かと疑いたくもなる表示です。

 

●「二重床で遮音性に配慮」の表示。実は当たり前

二重床の誕生は、マンションの黎明期に上下階の生活音が問題になったからです。

当初は絨毯敷きだったので、さほど大きな問題ではなかったのですが、ドスンドスンという音は解消できず困っていました。 そこで、施工会社と建築士、住宅設備メーカーなどを含めてマンション業界では、集合住宅における騒音問題の解消に努めることとなりました。

 

そんな中で二重床が誕生したのですが、誕生から既に40 を経過しています。

その後、単に二重にするだけではダメと分かり、様々な改良を加えられて今日に至っています。分譲マンションで「二重床」にするのは、特別なことではないのです。

 

●「ホテル並み」の言葉に潜む欺瞞

共用廊下が内廊下設計のマンションの場合、その部分を「ホテル並みの内廊下方式を採用」などと表現しています。

ホテル並みと聞くと、一瞬「シティホテルの少し暗くて、おごそかな雰囲気を漂わせるフカフカ絨毯張りの廊下」を想像する人が多いと思います。チェックインした直後、ポーターが洒落た専用台車にスーツケースなどを積んで部屋まで案内してくれたときの光景を思い出したりする人もあるでしょう。

 

マンションの内廊下が、「ホテル並み」なのはごく一部に過ぎません。「ホテル並み」に誇張はありませんし、買い手が勝手に想像しているに過ぎませんが、大抵のマンションの廊下幅は狭く、豪華な絨毯張りなどではないのです。

 

高級とは言えないモザイクのタイルカーペット、壁もただの無機質なビニールクロス張りというパターンが多いのです。 同じなのは薄暗さだけかもしれません。

 

●「週末なので部屋がなくなるかもしれない」は恫喝?

購入意欲が高まり、「前向きに検討したいが即決はできない」などと言うと、担当営業マンからは「お早目の結論を」と返って来ます。 

そして補足します。「週末はご来場者も多く、本物件は先着順販売中なので先にお申込みが入るかもしれません」と。これは、ある種の恫喝です。焦燥感を煽り、結論を急がせる営業トークなのです。

 

しかし、営業マンに言わせると、後日申込みしたいと来られても希望住戸がなくなってしまったら、顧客を怒らせることになるからです。一理あります。 ところが、販売状況によって、また在庫状況によっては、全くの杞憂に終わるようなことなのです。

 

あまり人気がない物件や在庫がまだ多数あるようなケースでは、前向きに考えようとしている客のために、希望住戸をキープすることは容易なはずです。

 

営業マンの使命は契約を取ることです。目の前の客から直ぐにでも「買います」の一言を聞きたいのです。しかし、「早くYESの答えをしないとなくなるよ」は、無礼な態度と言わざるを得ません。

 

買い手が、どのような販売状況にあるのか、同タイプの在庫はあと何戸あるのかについて確証を得るのは難しいことかもしれません。たとえそうであっても、疑ってみることが大事です。

 

●次期で値上げする予定です

分割販売については先に述べましたが、この販売手法では価格表に未発売住戸の価格を表示しませんし、既分譲住戸の契約済み住戸も「成約済み」の文言によって価格を隠してしまうのが普通です。

 

未発売住戸は「次期以降分譲」の文言で塞いであり、聞いても価格は未定と答えるかもしれません。しかし、同タイプの住戸は、階が上下のオープン価格から推定可能です。

例えば、5階が4000 万円で7階が4100 万円なら次期発売予定の6階は普通なら4050 万円となるでしょう。それを「値上げする」と言われることがあります。

 

これも、ある種の恫喝です。人気を博している物件では本当に値上げする売主もあるのは事実ですが、そうでない方が多いのです。

「値上げすると言えば、早く結論を引き出せる」と考える営業マンの姑息なセールストークと思った方が間違いありません。

 

筆者に言わせれば、そんな言葉より「買い手はなぜ結論を下せないのか、どこに問題があるのか、何が心配なのか」に思いを巡らせ、その解を見つけ、買い手を納得させるよう努力すべきなのです。

その努力を怠って恫喝に走るとは、何と高慢な営業姿勢なのでしょう。

 

●「複層ガラスだから音は大丈夫」は真っ赤なウソ

空気層を挟んだ2枚ガラス(複層ガラス)は断熱効果が高く、結露の出にくい優れものとされます。最近の新築マンションは、複層ガラスでないものを見つける方が難しいくらい標準化が進んでいます。

 

この複層ガラスで組んだサッシは、従来の1枚ガラスより何となく防音効果もありそうですが、実は全く変わらないのです。

無論、防音効果も断熱効果も高い複層ガラスのサッシがないわけではありません。しかし、断熱性高めただけのものが殆どで、防音効果はないと聞きます。

 

複層ガラスはサッシが重くなって開け閉めがつらくなるので、ガラスを1枚ものより薄くしてあるのです。そのために音の透過率は2枚にしても1枚と変わらないというわけです。

 

サッシの防音効果が高いかどうかは、複層か単層かではないところにあるので、「複層ガラスだから音は心配ない」という説明は誤りなのです。

音が心配な場所にある物件を検討する際は、「遮音等級は?」と尋ねることが大事です。T-3 か、T-4 の答えなら問題ありませんが、T-2 T-1 では心配です。

 

●「他社は20 センチですが当社は23 センチですから優秀」はウソ

これはスラブの厚さに関する説明です。 床の薄いマンションは遮音性の低いマンションでもあり、昔は15 センチのマンションも普通にありました。 最近のものは最低でも18センチ、標準的には20 センチ、23 センチも珍しくありません。

 

23 センチのスラブ厚のマンションは優れたものなのでしょうか?営業マンの説明は、そう言いたげです。少なくとも、説明を受けた買い手は誤認します。そのようなマンションもないことはないのですが、建築費高騰の状況下ではコスト抑制の考え方が一般的なので、23 センチにしたのは別の理由がありそうです。

 

実は23 ンチでなければならない可能性が高いのです。マンションの床の厚さは柱・梁で囲まれた四角の平面積の大きさで決まって来ます。

狭い場合は薄くても問題ないですが、広ければ床はたわみが生じます。たわみをなくすには床を厚くしなければならないのです。

 

たわみは、太鼓の表面を想像してもらうと良いのですが、皮がぴんと張っている太鼓を叩くと音が出るとともに皮は振動します。この音と振動の現象がマンションにも起こります。

 

室内の重量、すなわち居住者の体重、家具や家電、或いはピアノのような重量物の合計重量に耐えうる床でなければならないわけですが、それだけではありません。室内で飛び跳ねたり走り回ったりすることも想定しています。振動音が階下に伝わるからです。

 

大きな太鼓ほど、皮は分厚いものが使われているはずです。 薄ければ下手したら皮が破けてしまうことでしょうから。 同様に、マンションの床も想定重量と遮音性を計算して厚さが決まって来るのです。

 

柱・梁で囲まれた平面積、言い換えると床の縦横の寸法が長ければ長いほど、床の厚みも当然20 センチでなく22 センチ、23 センチと厚くする必要があるというわけです。

従って、遮音性の観点では20 センチも23 センチ差がない場合が多いということになるのです。それを23 センチだから優秀だと説明する営業マンは単に無知な場合もありますが、欺瞞の可能性が高いのです。

 

●「製販一貫体制だから安い」はウソ

工務店やゼネコンがマンション開発を行い、自ら売り主になっている例がときどき見られます。その販売現場では、ほぼ例外なく「製販一体なので安い」と説明しています。本当でしょうか?

 

実際は、土地を高く買ってしまえば売値は高くなりますし、複雑な構造であったり、工事のしにくい狭い道路沿いのマンションであったりすれば建築費は高くなり、伴って分譲価格は高くなるのです。

 

同じ条件で他社に工事を発注するよりは安くなるのは道理ですが、実態はそうでもありません。中には、社内を部署ごとの独立採算方式を採っている企業もあり、販売部門は分譲利益を、施工部門は工事利益を取っているのです。

 

一見正しいような言葉の裏は実際と異なるという場合が多い。それが真実です。


・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらからhttp://www.syuppanservice.com

 

三井健太の2大サービス「マンション評価サービス」と

「将来価格の予測サービス」

・・・継続中・・・ご利用をお勧めします。

 

まとめて4件以内のショートコメントサービスもどうぞ

見学前のご利用がお勧め。肝心の部分に限定したショートレポートです。複数の候補があってお迷いのときに役立ちます。

  ショートコメントサービスの料金とお申込みは「三井健太のマンション相談室」でご確認ください➡http://www.syuppanservice.com

 

※こちらのBLOGも是非ご利用ください。

https://www.sumu-log.com/archives/author/mituikenta/(スムログ)

http://sumitaimansion.blogspot.com/(三井健太の住みたいマンション)

 

620日以前の記事はこちらです 

https://mituikenta.com/

 

このブログの人気の投稿

第800回 「続・地震に強いマンションの話」

第789回 「コストカットマンションと業界の苦悩」

第798回 中古マンションの価値判断と探し方のハウツー