第796回「コンパクトマンションという名の怖いマンション」

 

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●物件案内時の注意点(買い手に好印象を与えるコツ)

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単身者からのご相談がときどき届きます。ご相談のマンションの広さは40㎡台が多く、広くて50台、つまりコンパクトマンションです。多くは中古物件ですが、これら候補物件の資産価値についてのご心配を綴ったメールが目立ちます。

 

10年か20で転売する可能性が高いので、10年または20年後の価格を予想して欲しいと綴っていることもあります。

 

今日は、一般論として「コンパクトマンション選びの注意点」をお話します。

 

<コンパクトマンションの定義>

業界に定着している「コンパクトマンション」の定義は30㎡~50くらいまでの面積の、間取りで言えば、ワンルームよりは広いものの、2寝室を取ると苦しい広さのマンションです。二人家族が住めないこともない広さの上限と言えましょう。

 

30㎡未満のワンルームマンションと50㎡以上のファミリーマンションとの間に位置づけられますが、1990年代後半くらいからでしょうか、晩婚化と非婚者の増加、女性の社会進出などを背景として単身者のニーズが急増し、マンションデベロッパーとしても無視できない需要ボリュームに拡大したのです。

 

間取りは広めのワンルームか1DKから、広めでは2LDKなっていて、デベロッパー各社は単身者ニーズを研究しながら、それに応えようして来ました。

 

代表的な間取りでは、次のようなものが挙げられます。

1)パークコート麻布十番ザ・タワー:42.32

キッチンを独立型にした点が特徴的です。洗面台下部に洗濯機を組み込んで効率的で美しいパウダールームを実現しました。玄関のシューズインクローゼットをはじめ、収納にも配慮していますし、寝室は扉をフルオープンにできるという、秀逸な1LDKプランと言えましょう。
















ビング・ダイニングとしては狭いかもしれませんが、家具の選び方と配置によっては優雅に過ごすことのできる空間となりそうです。



2)品川イーストシティータワー:41.65 

・・・・・(1と違って、玄関から奥が丸見えにならないレイアウトもいいですね。

収納スペースも充実していますし、トイレも浴室と分離されていて良いプランです。


 


<コンパクトマンション今昔>

コンパクトマンションという呼び名は誰がつけたか知りませんが、1年くらい前から登場して来た形態です。 単身者は元々ワンルームの賃貸マンションに住んでいるので、どうせ買うならLDKに住み替えたいという希望を持っています。

 

金利が低下したことで、比較的所得の低い若手の独身サラリーマンでも、ワンルームより広いタイプに手が届くようになっています。 加えて、晩婚化が進んだために若手の年代が20代だけでなく30後半まで広がったのです。

 

さらに、男女雇用機会均等法の成立(1985年)以降、女性が腰掛けと考えていた職業意識から脱皮してキャリアを積み活躍する人が増えたため、所得も男性並みに高くなったため、LDKでは満足せず2LDK希望する人も増えました。

 

このような経過をたどり、単身者がワンルームを自己居住用に買う時代は過ぎ去り、少なくとも30以上のコンパクトマンションが単身者ニーズの中心に変化して来たのです。

 

<コンパクトマンション2つの潮流>

ところで、いわゆる単身者向きのコンパクトマンションには2つの種類があることを断っておきます。ひとつは全戸がコンパクトタイプで構成された「オールコンパクト」のマンションです。もうひとつは、ファミリータイプとの「混在型コンパクトマンション」です。

 

前者は敷地300前後の小型マンションで、後者は主に超高層の大型マンションに多く、下層階に配置されています。

筆者のおススメは後者で、前者の購入に関するご相談には否定的な所見しか出せないことが多いのです。そのことに、いつも心の痛みを覚えます。

 

<コンパクトマンション企画の業界事情>

デベロッパー各社はコンパクトマンションの需要が少数派とは言えないボリュームに拡大し、無視できないことに気付きました。

 

広い敷地が入手できれば、中心需要であるファミリーマンション向けの商品を企画するのが普通です。ただ、広くてマンション建設に向く用地を取得することは、実は簡単なことではありません。たまに売地情報があっても、競争は激しく入札になることも多いので買収額はいやおうなく高くなってしまいます。

 

一方、比較的争奪戦の対象になりにくいのが狭い土地です。都心で駅に近いなどの条件はあるものの、取得しやすいのです。

 

広い用地がないから仕方ない。狭小用地でも買って、コンパクトマンションでも造るか・・・そんな消極的な動機でコンパクトマンションができてしまうことは少なくありません。 初期の動機は不純でも、ニーズがあると気付いたマンション業界は、盛んに供給を増やして来ました。

 

タワーマンションの下層階にずらりとコンパクト住戸を並べたりするほか、駅前の狭小敷地を取得して全住戸コンパクトタイプにしたりと、競い合うように販売しました。

 

オールコンパクトのマンションは、狭小敷地で企画されましたが、回転が速く、リスクの少ない商品だと、業界が考えていた節があります。

大規模マンションは開発期間が長く、土地を仕入れてから販売にかけるまで2年、3とかかりますが、小規模マンションは開発期間が短くて済むのです。

 

許認可が比較的簡単に降りることに加えて、商業地であれば、日照権問題などで近隣住民と争いになることも少ないからです。

 

また、日当たりや見晴らし、環境などの条件もファミリータイプのマンションよりずっと緩やかです。単身者は、昼間はいないので、北向きでも一向に構わないわけです。寝るためだけの家という発想で商品化が進められました。

 

間取りも、ファミリータイプほどバリエーションを設けたり、採光を気にしたりする必要もないので設計時間も短く済みます。

 

<コンパクトマンションは割高になる>

コンパクトマンションは、土地代が競争によって吊り上がらないにも関わらず、価格は高くなるケースが多い実態はあります。その理由は、次の二つです。

 

⓵コンパクトマンションは建築コストが高くつく

説明を平易にするため、70㎡のファミリータイプと35のコンパクトマンションとで比較してみましょう。

70㎡タイプ1戸を35㎡2戸に切り分けたら、玄関ドアもバスもトイレも、また排水管も、また給湯器やメーター類も35㎡タイプの方が2倍必要です。グレードが違うので、単純にコストが2になるわけではないですが、高くつくのは確かです。

 

   )敷地が狭いと工事がしにくいので施工費は高くつく

また、狭小敷地での施工は何かと不自由で、例えばクレーン車やコンクリートミキサー車も敷地内に入れず、敷地の外から(公道を塞いで)使うことになり、資材置き場も工事事務所も敷地外で借りることになります。

 

このように、コンパクトマンションは建築コストが高くなってしまいがちのため、販売単価は、どうしても高くなります。結局、同一エリアの平均的なファミリーマンションの坪単価が300万円であるとき、コンパクトマンションは@350万円とか@400万円などとなってしまうのです。

 

<オールコンパクト物件は小型ゆえに付加価値がない>

大規模マンションは、その規模が差別化に役立っています。大きいだけで存在感があるからです。 反対に、オールコンパクトマンションは駅前通りなどの便利な場所に建つことが多いものの、小型であるゆえに目立たない、いわば周囲の建物に圧倒され埋没してしまいます。

存在感の有無は資産価値にも影響します。

 

また、エントランスやロビーといった共用部分の規模も、全体スケールに比例して小さくなるオールコンパクトマンションは、その面でも「立派・豪華」から遠いものとなります。それが資産価値に与えるマイナス部分になることは論を待ちません。

 

<オールコンパクトマンションは管理費が高くなる>

オールコンパクトで100戸もある大型というのは殆んど見られません。大きくてもせいぜい50戸程度で、大抵は30戸くらいの小型物件です。50戸と言っても、コンパクトばかりですから、ファミリーマンションの2030戸規模と同じくらいです。

 

規模が小さいと管理費が割高になるものです。管理費が高いと売りにくいと見る売主は、管理人を置かない管理体制(巡回管理)にして販売を行います。

 

管理人がいないマンションは将来どうなって行くのでしょうか?そこに思いを馳せる買い手も少なくはないのですが、数十年後を想像できる人はいないのでしょう。

管理人がいないマンションは資産価値が維持できない傾向が強いのです。

 

結局、コンパクトマンションを買うなら、コンパクトマンション同士の比較をしつつ、できるだけ付加価値のある物件・規模の大きい物件を選択した方が良いと言えます。

 

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