第799回「地震に強いマンションの話」 

 

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今日は、マンションの構造、そのうち「耐震性」についてお送りしようと思います。

 

.甦る阪神大震災の記憶

2011年発生の東日本大震災は、地震動による建物倒壊ではなく、津波による流出被害が目立っており、震度6強の強い地震であったため、津波の被害以前に地震動だけで被害を受けた建物も多かったのです。

筆者が被災地を訪れて目の当たりにした光景は、阪神大震災のときの光景と重なるところが少なくありませんでした。 

 

筆者が見た阪神大震災、空襲跡の町はこんなであったのだろうろうか。戦争経験のない筆者ですが、そう思ったものです。家という家が皆つぶれ、瓦礫の山が続いていました。

 

被災地を歩きながら感じたことがあります。それは、はるか先まで見通しが利く状態になった奇妙な風景でした。 ぐるりと目をやると、ポツリポツリと、そびえ立っているマンションの姿でした。

 

マンションって、なんと頑丈なのだろう」。その時、改めてマンションの強さを知ったのです。なにしろ、一戸建て住宅は、殆ど倒壊していたのですから。

 

東京でこの話をすると、聞き手は皆、怪訝な顔をしました。テレビの報道は、マンション倒壊のニュースを盛んに流していたからです。それから暫らくの間、東京のマンションは売れなくなりました。

 

倒壊したマンションは昭和40年代に建てられた古いものばかりで、比較的新しいマンションは亀裂が入ってはいたものの、生活できない危険なものも、倒壊したものもなかったのです。1981年に建築基準法の規定が改正され、新耐震基準ができました。それ以来、マンションはそれ以前のものより頑丈にできていたため、被害は小さかったのです。

 

しかし、テレビの影響力は大きなものです。 被災マンションの現場ばかりを主映像として送り出したため、被災地から遠くの人々は誤解してしまったのです。

 

マンションは、揺れるから恐いという声があるのも事実ですが、階数や構造によっては、大きな揺れに見舞われます。それでも、倒壊しない。安全な建物なのです。

 

マンション建設では、免震工法制震工法が盛んに採用されている昨今です。 これは耐震性に揺れが少ないという利点が加わった優れものと言われます。

 

.マンションの耐震性と揺れ対策

マンションの構造を耐震性という観点から分類すると、一般型の「耐震構造」と、建物内に組み込んだ制震装置を用いて揺れを減衰させる「制震構造」、及び、基礎部分に設置した免震装置によって地震の揺れが建物に伝わらないようにした「免震構造」の3種類があります。

 

「制震構造」と「免震構造」は、「耐震構造」に比べて揺れを小さくすることができる優れものであり、最近のいわゆるタワーマンションの殆んどで採用されているようです。

しかし、揺れが小さくなるといっても、巨大地震に見舞われれば、「制震構造」の揺れの大きさも相当なものになるようで、「免震構造」ほどの軽減(減衰)はしないとも聞きます。

 

それぞれの特色を比較してみましょう。

 

●耐震構造

大きな地震に見舞われても、建物が倒壊しないように頑丈に造るという考え方が日本の耐震建築の根底にあります。

つまり、骨組みをがっちり強固なものにして地震の揺れ(水平方向に働くエネルギー)を受け止めようとする理論です。

 

相撲に例えると、強い押しにびくともしない横綱の姿とでも言えば良いでしょうか。鍛えた足腰が外部からの力に負けない。それと同じで、どんなに揺さぶられても倒れないのが耐震構造というわけです。

 

ただ、耐震構造の問題は、地震エネルギーがもたらす加速度で言えば、基礎部分の加速度が建物上部では数倍に達する激しいものとなることにあるようです。阪神大震災や東日本大震災のような巨大地震のときは、立っておれないほど揺さぶられ、人は大きな恐怖感に包まれたと聞きます。

 

さらに、内部の家具・家電・什器等は次々に転倒、飛散して圧死する例も少なくなかったと聞きます。 硝子が割れたり、食器棚からグラスや瓶、食器類が飛び出したりすれば、その破片で傷を負うという怪我も恐いものです。

 

家財が凶器に変貌するのです。その恐怖感は想像を絶します。恐怖から逃れようとして慌てて玄関に向かって走り、転んで怪我をしてしまったという事故も耳にしました。

 

建物本体も無傷ではなく、倒壊はしないが、柱や壁に亀裂が入り、ドアが変形して開かない、窓ガラスが割れる、外壁に貼ったタイルが剥離するといった被害が起きるのです。

耐震構造の場合、巨大地震の際には建物の損壊は小さくないのです。

 

●巨大地震の度に強化されてきた耐震設計

理論と実際はしばしば異なるものです。 理論上は大丈夫とされていたもの、あるいは研究室での実験結果で安全と思われた製品が、想定した値を超えてしまったり、想定外のことが発生したりして、事故が起きたりするものです。

 

クルマや家電などの事故や障害は、理論と実験を経て実用化されたものでも起きることが知られています。建物も同じと言えましょう。

 

簡単に言ってしまえば、建築基準法に従って適切に安全に設計した建物であっても、地震によって想定外の被害を受ける場合があるのです。その原因や背景はともかく、過去の巨大地震によって発生した破壊や損傷の結果から教訓を得て、つど建築基準法は改正を繰り返してきました。

 

耐震構造も、以上のような改訂を経て現在に至っており、その結果、最新基準に則って建築された建物は、震度6強から7の揺れに襲われても倒壊することはないことになっています。

これは単なる理論や実験データではなく、何度も襲われている地震被害の調査によっても証明されているのです。

 

現に、2011年の東北・太平洋地震(東日本大震災)でも、1995年の兵庫県南部地震(阪神大震災)でも、新基準で建てられた建物は軽微な被害しかなかったのです。

 

●制震構造の仕組み

初めに断っておかなければなりません。制振か制震かですが、学問的には前者を使うことが多いそうで、マンションの広告には後者が多いというだけのこと。意味は変わらないので、ここでは後者を使うことにします。

 

さて、制震構造とはどのような仕組みかですが、振動を吸収する装置「ダンパーdamper」を建物の要所(壁の一部など)に取りつけ、地震の揺れを減衰するものと聞きます。

建物が振動で変形した際にダンパーも変形させ、ダンパーにエネルギーを吸収させて建物の損傷を防ぐ。耐震構造と比較してイメージ的に示すと図-1のようになります。

 

ダンパーの種類、形状は様々で、オイルダンパーや粘弾性体、などがあり、また、設置様式によりブレース型や間柱型、壁型等があるようです。

【図-1】

 

清水建設は、図-2のような鋼管パネルをダンパーに使用し、間柱型の装置で制震マンションを建設しているようです。

図-2 【制震装置のイメージ】



 

制震構造の考え方は、地震の揺れを仕方ないものとして受け止め、特殊装置によって地震エネルギーを吸収しようというものと聞きます。

 

制震構造は、免震構造に比べて耐震効果は低いと聞きます。それでも、比較的コストが安く、施工もしやすいので工事監理の面からも採用しやすいと言われます。既存の建物に後付けすることも可能な形状のダンパーもあると聞きます。

 

また、メンテナンスも不要であるため、ランニングコストに影響しない。従って、マンションでは採用しやすい構造と言えます。

 

●免震構造の仕組み

テレビ報道に注目していると、よく「下からドーンと突き上げるような地震でした」というコメントが聞かれます。人間は上下動に対して敏感にできているらしく、水平の揺れより感じやすいのでしょう。

だが、上下動は巨大地震でも水平方向に比べて5分の1から10分の1とされ、建物が破壊されることはなく、怖いのは水平方向の揺れだと聞きます。

 

地震波が建物の周期と共振して大きく揺れることが破壊につながるので、この共振を避ける方法が模索されて来たようです。

その目的に沿って考え出されたのが「免震装置」です。 「免震装置」は、1970年代にフランスで開発された免震ゴム(積層ゴム=アイソレーター isolator )に始まると聞きました。

 

積層ゴムは、厚さ510ミリメートルの天然ゴムと厚さ35ミリメートルの鋼板(フランジという)を交互に数10層サンドイッチ状にしたものです。(下図)


 

円形の積層ゴムは、おおよそ直径数十センチから1.5メートルあり、これを建物の基礎と建物の間に挿入し、ボルトで固定する。積層ゴムの数や配置は、精密な計算に基づいて決定されるようです。

この免震ゴムと、ダンパーを組み合わせたものが「免震装置」です。

 

 積層ゴムの特性は、上に載った重い建物を支えても沈みこまない十分な固さを持ちながら、水平方向には軟らかく、地震の揺れを吸収してしまうので、建物へ伝わらないと言われます。

且つ、元に戻る復元力がある。従って、地震が収まれば、建物は水平に動いて元の位置に戻るのです。

 

ゴムが本来持っている性質を利用しただけの、理論的には簡単な装置です。この免震装置を設置した建物は、大きな地震が来たとき装置自体は激しく水平に動き、図-4のように変形します。その結果、上部に載っている建物本体はゆっくりと動くのです。

図-4 【積層ゴムの概念】

 

 

免震ゴムは50センチメートル程度変形しても破断しないだけでなく、且つ瞬時に元に戻る復元力も備える設計になっているようです。

だが、積層ゴムには問題がひとつあるようです。地震エネルギーが建物に伝わるのを遮断し共振を防ぐのですが、揺れが巨大な場合、水平方向の移動距離があまりにも長くなり過ぎ、積層ゴムが破断する危険があるのだそうです。

 

そこで、移動距離を極力短くする装置とセットにすることが考え出されたのです。。

これが、既に述べたダンパーdamper)で、日本語では減衰器と言います。現在、様々なダンパーが開発されているようです。

 

●免震マンションの メリット デメリット

免震構造の場合、室内の揺れは制震構造よりもさらに少なく、住宅には最適と言われています。ただマンションでの採用例は、阪神大震災以後、一時的には急増したものの、新築マンションの中に占める割合で見ると、さほど多くはないのです。

 

従来型の耐震構造は、特殊な装置を用いなくても済み、鉄筋やコンクリートなどの建築材料や耐震設計法の進歩もあって、高強度を実現できるようになったからと聞きました。

 

3つの方式はそれぞれに長所があり、デベロッパー各社は物件ごとに検討したうえで、最も適した方式を採用し、安全確保を目指していると聞きます。逆に言えば、免震構造がベストとは考えていない証しなのです。

 

東日本大震災でも、一部の物件では非耐力壁(構造上問題のない壁)にひびが入ったり、一部設備が壊れたりするといった事例も出たようですが、これは巨大な地震の力を構造体から逃すことで建物全体の安全を確保するためでもあるのです。

 

耐震構造のマンションに、主要構造部が損傷することはなかった。このため、何が何でも免震構造、あるいは制震構造を採用しようという機運にはならなかったのでしょう。

 

免震マンションのデメリッ

全ての面で耐震構造よりも優れていると言って過言でない免震構造だが、もちろんデメリットもある。以下にまとめておきます。

   コストが高い

導入時のコストは大きくないと聞きますが、定期点検のための費用も必要になることが気になる点です。耐震構造にはない装置が、いざというとき効果的に機能するかどうか、劣化や破損はないかを専門技術者に依頼して定期的に点検する必要があるのだそうです。

その費用は、入居者の管理費や修繕積立金から賄われますから、管理費等の増加につながります、とはいえ、大型タワーマンションに採用すれば、1戸当たりの費用は大きくないはずです。

 

   構造設計の時間が長い

経験のないゼネコンが多いのと同じように、設計事務所も免震構造の複雑な計算に慣れていない、同時に設計それ自体が未経験という設計事務所が圧倒的に多いのが実態です。

経験のある設計事務所は限られるので、仕事が集中し、作業が遅れがちで、初めての事務所に依頼する場合は言うまでもありません。


手続き時間が長くなってしまう場合もあるようです。地上60メートルを超える超高層マンションの場合は例外なく国土交通大臣の認定が必要になるが、60メートル以下の場合でも、大臣認定を必要とする免震構造があるのだそうです。

 

大臣認定が必要と判断されると、財団法人日本建築センターの審査(評定という)を受けなければならない。そうなると、時間はさらに3、4か月余分にかかってくるのです。

 

.コンクリートの耐久性

●コンクリートの構成

コンクリートは、セメントと骨材、水、混和材の4種の材料で構成されています。

セメントは、水を加えると化学反応を起こして固まるという性質があります。セメントそのものは、石灰石、粘土、酸化鉄を焼いて粉砕した灰白色の粉です。見たことのある人も多いことと思います。

 

骨材とは、砂や砂利のことです。

は、これが多いと接着力が弱くなり、少ないと接着力は強くなります。水を少なくすれば扱いづらくなるため、ほどほどの硬さが必要で、通常はセメントと水の割合は5050とされます。

 

●耐震性と耐久性

「耐震性」と「耐久性」という二つの言葉は、1字違いでよく似ているだけでなく、地震に対する強度にも強く関係しています。

構造部分からマンションの耐震性能を考える場合、同時に耐久性が高いことも必要になって来る。

 

住宅を新築した直後は、現在の基準で作った建物であるならば、高い耐震性能を確保していると言えるのですが、時間が経つと、だんだんと色々な部分が傷んで来ます。

耐震性を確保する為に重要な構造部分のコンクリートが劣化すれば、マンションの耐震性もだんだんと劣化することになります。

 

●鉄筋コンクリートの強度

ところで、鉄筋コンクリート造の建物の強度はどのようなメカニズムになっているのでしょうか? 

 

圧縮力(縮もうとする方向に加わる力)に強いのがコンクリートで、引張力(伸びようとする方向に加わる力)に強いのが鉄筋。このふたつを-を組合せた構造のことを鉄筋コンクリート造と呼ぶのです。

 

補足すると、もともとコンクリートは押しつぶそうとする力(圧縮力)には強いが、引っ張る力には弱いという特性を持っています。また、鉄筋は引っ張る力には強いが、圧縮力と耐火性に劣ると言われています。

 

それぞれの良い点を組み合わせ、耐久性、耐火性を高めたのが鉄筋コンクリートであり、マンションの柱・梁など、構造上主要な部分をこの鉄筋コンクリートで構成している建物のことを鉄筋コンクリート造、別名RC造(Reinforced Concrete)と呼んでいるのです。

 

コンクリートはメンテナンスフリーの材料と言われることもありますが、実際には様々な原因によって劣化を生じます。

 

●コンクリートの耐久年数は?

鉄筋コンクリート住宅の寿命はどのくらいあるのでしょうか?よく、マンションの寿命は50年とか60年と言われますが、実際はどうか。100年コンクリートなどという言葉も耳にすることがある昨今、何をもって年数は表示されているのだろう。この疑問に答えておく必要があります。

 

コンクリート住宅の耐久年数は、日本建築学会が定めており、以下のようになっています。

日本建築学会の「建築工事標準仕様書(JASS5)・1997年改訂」により定められた理論値で、「大規模補修 不要予定期間」を示しています。

大規模補修 不要予定期間とは、分かりにくい表現ですが、「構造体および部材において軽微な補修を越える大規模な補修を必要とすることなく鉄筋腐食やコンクリートの重大な劣化が生じないことが予定できる期間」という意味と聞きます。

 

耐久設計基準強度が、18/mm2の場合、大規模補修不要予定期間は30年、同24/mm2の場合で65年、さらに同30/mm2の場合は100年ということになっています。

30/mm2とは「30ニュートン・パー・平方ミリメートル」と読み、1平方ミリメートルの広さに30トンの重さが載っても破壊しない強さを表わします。単位を変えてわかりやすくすると、1㎡の広さに、およそ3,000トンの重さがかかっても耐えられる固さを指します。

 

これまでのマンションは、一般的に、2127N/mm2程度のものが多かったのですが、最近では、30N/mm2という硬いコンクリートを使ったものも多く見られるようになっています。

 

高耐久マンションは、単に性能の高いセメントや混和材を使えば完成するというものではないようで、マンションを丈夫で長持ちさせるには、以下の二つの点が重要とされます。

  かぶり厚の確保

鉄筋とコンクリート表面との距離、すなわち「かぶり厚」が厚いほど、水と酸素がコンクリート内部に浸透しにくく、鉄筋の腐食を起こさないため、耐久性が高まります。

 

鉄筋は錆びると膨張してコンクリートを破壊します。そうなれば、当然、その柱や壁はぼろぼろと崩れ落ちる状態になり、構造的にももろいものに変質してしまうのです。そこで、かぶり厚を十分に確保して施工するということが必須となるのです。

 

水とセメントの混合比率

水が少ないほど粘りがある強いコンクリートが生まれるが、少なくすると施工がしにくいという特徴があります。

耐久性の高いコンクリートでは、水は50%以下に設定されるようです。

 

●マンションの寿命

そもそも鉄筋コンクリート造や鉄骨・鉄筋コンクリート造の建物のコンクリートは、鉄筋(もしくは鉄骨など)を骨として、その周りをセメントと砂利に水を混ぜ、化学反応させて固め、一体化させたものです。化学的には、強いアルカリ性を持っています。

 

それが中の鉄筋を保護しているために、錆びて劣化することなく強度を保つのです。コンクリートは圧縮に強く引っ張りに弱い材料で、鉄筋は引っ張りに強く圧縮に弱い材料ですが、互いの弱点を補い合うという利点を持つ建築材料なのです。

 

しかしコンクリートは時間が経過するにつれ、雨水や空気中の炭酸ガス、亜硫酸ガスなどと反応し徐々にアルカリ性が弱くなっていきます。

この現象はコンクリートの中性化と呼ばれ、コンクリートの表層から鉄筋の位置まで中性化が進行すると、鉄筋は腐食、つまり錆びやすくなるとされます。

 

建築法規では鉄筋からコンクリートの表面までを3センチ以上確保すること(かぶり厚3センチ)と定められています。

 

鉄筋は腐食する(つまり錆びる)と膨張します。鉄筋が錆びて膨張すると、硬いコンクリートは内部から押し広げられて破壊され、ひび割れがおき、最終的には鉄筋の上に被っているコンクリートが崩れて中の鉄筋がむき出しになるのです。

 

コンクリートは、圧縮には強いが柔軟性のない素材なので、押されると耐えられなくなって壊れ、ボロボロ状態になります。

この現象を「鉄筋発錆によるコンクリートの破壊」、通称「鉄筋爆裂」と呼びます。これが建物全体に広がると、コンクリート、建物ともに寿命に達したということになるのです。

 

●住宅性能評価と「劣化対策等級」

コンクリートの耐久性に関し、マンションの性能表示制度(※)では、「劣化対策等級」という指標で表し、最強レベルの等級3が「おおむね7590年まで大規模な改修工事を必要としない対策が講じられたもの」とし、等級2は「おおむね50~60年まで」、等級1は「建築基準法に定める対策が講じられている」と基準を定めています。 先述の通りです。

 

住宅性能表示:平成11年に制定された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」にもとづいて行なわれているもので、項目ごとに等級で表した住宅性能表示基準を設け、指定住宅性能評価機関が評価を行います。住宅の性能を客観的に評価する公的な証明、または鑑定書のようなものです。


マンション版は、住宅の性能を大項目10から細分化した14項目ごと、等級1~5(項目によって3、4もある)で表わしています。

大項目の10とは、「構造の安定」 「劣化の軽減」 「火災時の安全」 「維持管理」 「温熱環境」 「室内空気環境」 「光・視環境」 「音環境」 「高齢者対応」 「防犯性」です。

 

多くのマンションは「劣化対策等級」が最低レベルの1で、それで問題ないとされているのですが、最近は数は少ないものの、等級2や等級3のマンションも見られます。

 

●住宅性能評価と「耐震等級13」について

コンクリートの劣化対策の中で性能評価を持ち出したので、耐震性の性能評価についても見ておきましょう。

 

性能表示法に基づく「耐震性能」は次のように区分されています。

耐震等級1:数百年に1度程度発生する地震(震度6強~7程度)の力に対して倒壊、崩壊しないレベル(=建築基準法レベル)

 

耐震等級2:数百年に1度程度発生する地震(震度6強~7程度)の力の1.25倍に対して倒壊、崩壊しないレベル(=災害時の避難場所に指定される学校や官公庁に相当)

 

耐震等級3:数百年に1度程度発生する地震(震度6強~7程度)の力の1.5倍に対して倒壊、崩壊しないレベル

 

現在販売されている新築マンションの大半が等級1です。等級2は、東日本大震災以後、増加傾向を見せましたが、最近は下火になったようです。

 

ところで、賢明な読者はお気づきと思いますが、この表示はうっかりすると勘違いしやすい。すなわち、1が1番上級なのではなく、23と数字が大きくなるほど上なのです。

 

●耐震等級“2”以上のマンションが少ない理由

見えない「安全品質」にコストを払うユーザーが確実に増えていると言われます。

「安全品質」とは、地盤の強度や建物の耐震強度ということになりますが、地盤に関しては立地によって様々であり、軟弱地盤の上に建設されるのも珍しいことではないのです。

 

どこで計画する場合でも、地盤調査を行なった後、最適な杭の長さや構造、工法を選択してマンション建設は計画されて行きます。

ただ、耐震強度のレベルは建築基準法で定められた最低ラインに留まることが多いのです。最低ラインといっても、「震度6強~7の地震にも倒壊・破壊しないもの」という高いものであり、住宅性能表示では、上述の通りこれを「等級1」としています。

 

2と3は既述のとおりですが、今のところ「耐震等級2」以上のマンションは増えつつあるとはいうものの、かなり少ないのが実態です。

 

100年に一度あるかないかの大地震でも倒壊しないレベルなのだから、等級1でも十分ではないかという声も業界内部にはあるようで、そうしたくてもコストの問題から実施を阻まれることが多いというのがホンネのようです。

 

それでも敢えて断行しているディベロッパーも存在するのも事実です。なかなか微妙な問題です。:

 

ともあれ、大震災以来「免震構造で行くか、それとも一般の耐震構造で行くか、耐震等級は2を目指そうか」。こんな会話がディベロッパー内部で日常的に交わされるようになっているのは事実で、購入者からすれば歓迎すべきことです。

 

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786回「値下がり覚悟で買わなければならないこともあるが・・・」

785回 「改めて問う、直床構造の問題点」

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